レビュー

編集だよりー 2006年12月16日編集だより

2006.12.16

小岩井忠道

 ゆったりとした舞、という以上の印象も知識もなく、これまで漫然と見、聴きしていた地唄舞(12月2日編集だより参照)の動作のポイントが、らせん動作の連続的な伝播にある、と初めて教えられた。

 「人文科学とコンピュータシンポジウム」2日目(15日)に、これを科学的に証明しようという吉村ミツ・立命館大学 COE推進機構教授の研究報告があったからだ。

 上方舞とも言われる地唄舞の優雅さは、らせん動作という独特の動き、具体的には踊り手の胸骨から肩、肩から指先まで渦巻き状の動きが、連続的に伝播することによって醸し出される…。

 吉村教授の説明と、共同研究者で舞踊家でもある国枝タカ子・茨城大学大学院助教授が、実際に身振りで示してくれたのを見て、なるほどと納得した。

 ありがたい。これからは舞を見る時の目の付け所が一つ分かった!

 これで素人は済むが、研究者は、数字で明確に裏付けないと研究論文にはならない。吉村教授たちは実際に踊り手の体の動きをモーションキャプチャーという装置で追いかけ、その結果をさまざまな数値で報告した。

 ところが、結論は、まだ証明できないという。

 玄人が見れば確実にわかる動きが、客観的なデータでは追認できない。人間の体の動きというのは、それほど微妙で奥深いということだろう。だとすると、愉快だ。頭を使うより体を使う趣味の方が合っている人間としては。

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