コラム - オピニオン -

エコビジネスで遅れる日本

東京大学 生産技術研究所 教授 山本良一 氏

掲載日:2007年11月21日

東京大学 生産技術研究所 教授 山本良一 氏

山本良一 氏

 

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第3作業部会の報告書によると、大気中の温室効果ガス濃度は既に455ppm、年間のCO2の排出量は430億トンに達している。このまま進めば2030年には537~817億トンまで行ってしまう。

しかし、CO2排出1トンあたり100ドルを投入すれば、CO2の排出量を160~310億トン削減可能ともしている。しかも、そのための既に商業化されたか商業化が可能な技術があるということも言っている。

世界は大きく動いている。EU(欧州連合)は2020年までにCO2を1990年時点に比べ20%削減する行動計画を発表している。英国は2050年までに同じく1990年比で60%削減、ドイツも2020年までに40%削減、オランダも30%削減を目指している。米国も自治体レベルでは532の市が京都議定書の目標を達成したいと動いているし、上院には60%、70%、80%削減する法案が提起されている。カリフォルニア州は2050年までに80%の削減を目指す州法を通している。

日本政府は、2050年までに全世界の温暖化ガスの排出量を半減することを6月の主要国(G8)サミットで提案し、今後真剣に検討するとしてサミット成果文書に含められた。低炭素社会経済の方向こそが持続可能な発展を保障することは明らかであり、国際政治、経済、科学技術、文化、宗教などすべてが脱温暖化、低炭素経済の方向へ劇的に動き出している。EUは6月初め、ドイツで環境大臣会合を開催し、エコ・イノベーションの推進を強く打ち出している。その内容は、欧州のトップランナー制度の導入、排出権取引、環境技術行動計画、グリーンな公共調達、グリーンなリードマーケットの創出、持続可能エネルギー技術などの推進だ。

実は、環境の技術、ビジネス、産業は激烈な競争になっている。しかし、経団連や日本政府の言っていることは、まさに大本営発表でしかない。環境産業は世界一、環境技術は世界一などと言っているが、海外のレポートを見ると全然そんなことは言われていない。

EUが何と言っているかというと、環境政策におけるリーダーはEU、エコ製品の世界市場の3分の1はEUが握っている。国際市場でのEUの占有率は、発電が40%、エネルギー効率が35%、持続可能な水管理が30%、廃棄物処理・リサイクル50%だと言っている。

エコビジネスの世界市場規模を見ると、EUは世界一となっており、米国がシェア37%で続いており、日本は18%のシェアで3位でしかない。

さらに英国が行った「環境研究における国際比較」を見ると、日本は5つの研究分野の論文発表数、被引用数どれをとっても3位以内に入っていない。また、ドイツの報告書を読むと、環境研究に対する政府支出のトップはドイツで、日本は6位である。環境省の調査では、日本国内に44兆円のエコビジネス市場がある。われわれはここでしっかり気を引き締め、全力を挙げて環境技術の基礎、応用研究と市場の獲得に乗り出さなければならない。

(談=11月2日、公開界面シンポジウム「エネルギーの変換と貯蔵-世界の趨勢」特別講話から)

 

東京大学 生産技術研究所 教授 山本良一 氏
山本良一 氏
(やまもと りょういち)

山本良一(やまもと りょういち)氏のプロフィール
1969年東京大学工学部冶金学科卒業、74年同大学院博士課程修了、89年同先端科学技術センター教授、2001年同国際・産学共同研究センター長などを経て、04年から現職。環境への影響に配慮した材料、エコマテリアルの概念を提唱するなど、早くから環境負荷の小さな社会への転換を唱えてきた。ISO/TC207/SC3(環境ラベル)日本国内委員会委員長など社会的な活動は多方面にわたる。01年度にスタートした科学技術振興機構社会技術研究開発センターの公募型プログラム「循環型社会」の研究総括も務める。

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