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『地域エコ元年』進取の精神期待

科学技術振興機構 理事長 北澤宏一 氏

掲載日:2010年1月20日

信濃毎日新聞 2009年1月18日朝刊「科学面」から転載

科学技術振興機構 理事長 北澤宏一 氏

北澤宏一 氏

 

新年早々ワシントンに出張し、「米国競争力委員会」の理事長と話す機会があった。「これから省エネ、新エネ時代。再び日本の時代が来ますね」というのが彼女の最初のメッセージだった。

たしかに米国から見ると、エコカーでは日本が圧倒している。また、テレビやエアコン、給湯器などの家電品も、発光ダイオードやヒートポンプなどの新技術も駆使して、目覚ましい省エネ製品の水準向上を日本は達成しつつある。雷や強風に耐える風車でも日本の材料技術が定評を得、世界一になったカリフォルニアの風力発電施設にも日本企業の参入が目立ち始めた。太陽電池も、本格導入はやや遅れたが、30年前のサンシャイン計画で築かれた太陽電池技術が現在の世界をリードする。政府の積極導入策を期待して、民間企業による設備投資も急加速している。

ここ約20年、日本人は萎縮して、未来への投資意欲をなくしてきたように見える。世界のGDP(国内総生産)はこの間2倍になったが、日本は取り残されてきた。明るい機運をリードするモデルがほしいところである。私は、信州には佐久間象山の進取の精神が残っていると信じたい。象山の門弟、勝海舟は幕末、アメリカに向け、咸臨丸で太平洋の大海原に船出していった。

鳩山政権の新成長戦略が昨年暮れに発表された。新政権は地域にお金を移し、内需拡大を目指す。さらに日本の進んだ技術を使って、低炭素社会を世界に率先して実現しようとしている。企業も徐々に腰を上げ始めつつある。

これから、その目的に適うさまざまなモデル地域づくりが各地で計画されよう。化石燃料に頼らないエコハウスや、小型水力・太陽光発電などにより消費量以上のエネルギーを生産するプラスエネルギー地域。子供たちを中心にした学校での地域エネルギー観測センター、親たちによる地域エネルギー企画経営など、新たな地域投資の方法が検討されていってほしい。

政府は財政赤字を、家庭も老後不安などを抱えて、国内投資が細っていたが、日本は全体としては世界最大の対外純資産を保有する。佐久間象山の進取の精神が、信州からの「地域エコ元年」計画に生きることを期待したい。

科学技術振興機構 理事長 北澤宏一 氏
北澤宏一 氏
(きたざわ こういち)

北澤宏一(きたざわ こういち)氏のプロフィール
長野県立長野高校卒、東京大学理学部卒、同大学院修士課程修了、米マサチューセッツ工科大学博士課程修了。東京大学工学部教授、科学技術振興機構理事などを経て2007年10月から現職。日本学術会議会員。専門分野は物理化学、固体物理、材料科学、磁気科学、超電導工学。特に高温超電導セラミックスの研究で国際的に知られ、80年代後半、高温超電導フィーバーの火付け役を果たす。著書に「科学技術者のみた日本・経済の夢」など。

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