ハイライト

十分な検討ない2,700億円プログラム(鈴木 寛 氏 / 文部科学副大臣)

2009.09.29

鈴木 寛 氏 / 文部科学副大臣

公開シンポジウム「ブダペスト宣言から10年 過去・現在・未来-社会における、社会のための科学を考える」(2009年9月9日、日本学術会議など主催)講演から

文部科学副大臣 鈴木 寛 氏
鈴木 寛 氏

 (野田聖子・前科学技術政策担当大臣が最先端研究開発支援プログラム2,700億円の配分について鈴木氏に「ご納得いただいた」と発言した件を問う質問に対し)

 「ご納得いただいた」と言われるのは、若干、認識に差がある。あの時、私が申し入れたのは、きちんと国会で決めた修正案の意図、つまり、これは経済対策ではなくて、研究開発基盤をしっかりすることだということを踏まえてください、ということだ。また、30課題で1課題90億円というのも、あの時、何度も確認したけれど、それは要求官庁と財務省とのメモであって、かつ勝手に、与党レク、当時の自民党のレク資料に役所がつくっていたことも承知していたが、これは当時の政府から国会に提出された予算書の中には入っていない。いわんや国会のあの法案(日本学術振興会法の一部を改正する法律案)の採決の対象にも入っていないことを確認して、そしてそのことを附帯決議にも明記している。その趣旨を踏まえて、きちんと選定を行ってください、ということだ。

 それから修正案を提起し、審議に立ったものとして言うと、法案の審議の前後、その研究開発投資のポートフォリオをもう少しちゃんと考えてほしいということだ。つまり、全部90億円というのは、いかにも芸がない。100億円を超えるものも1つか2つあってもいいかもしれないし、30億円ぐらいのものも10くらい、あるいは1億円のものが100ぐらいあってもいいかもしれない。そういう金額規模のバリエーションがあってもいいのではないか。

 また今回は総合点で上から30位となっているが、例えば、いろいろな項目に分けて、未完成ではあるけれども光るものがあるというようなもの、例えば盗塁だけはすごいとか、三冠王だけがいいわけじゃないだろうというような視点があってもよいのではないか。それから、選ぶ人も、例えば30代がピアレビューで選ぶとか、いろいろな選び方がある。今回は2,700億円という前代未聞の規模なのだから、そこでトータルとしてのポートフォリオ、テーマのポートフォリオ、テーマの中でもどのチームにやらせるのかというようなバリエーションを十分考えた上でやるべきではないか、という主張を法案の時からやっており、私も野田大臣にあらためてそのことを申し上げた。

 その時に、その考え方は良いというところは合意を見た。従って、合意した部分は、30課題の90億円ということではなくて、研究開発投資のポートフォリオというものをきちんと作る、ということだ。それから日本はそういう、選び方の政策科学、あるいは審査の政策科学がほとんどない。その都度、その都度、担当者の思い入れとか、思い込みとか、思いつきとかということでやってきた。そうではなく、もっときちんと毎回毎回そういうものが積み上がってきて、日本の研究開発コミュニティとしてノウハウがたまっていくことが大事だ。そのためには、従来の役所が選んできたものを、もう一度レビューするとか、あるいは諸外国がどういうふうにそういうセレクション(選択)をやっているのかということも、ちゃんと調べるべきだ、ということを申し上げた。

 そういう観点から言うと、今回のセレクションの何が問題かというと、とにかく早くやってくれという麻生首相の意向が強かったために、十分な研究テーマについてのヒアリングあるいはそれについてのディスカッションが行われなかった。そのことに、相当程度の日本の研究者が怒っている。本当に10分間のヒアリングという粗っぽいことで、このような巨額なものが決められるのは、納税者の観点からいかがなものか、と。一生懸命やっておられる研究者、地道に頑張っておられる研究者に対して、あのような粗っぽい選考(プロセス)でやっていくということ自体に、日本の研究開発に携わる多くの方々が、民主党にも強い憤りを寄せておられる。そういう意味では、今回の少なくとも選考プロセスというものは、相当反省をし、総括をし、そして今後に活かしていくべきであるということを、きちんと菅科学技術担当大臣、川端文部科学大臣、中川文部科学副大臣に引き継いでいきたいと思っている。

 (2,700億円の基金の執行を停止すべきだと考えているのか、という質問に対し)

 総合科学技術会議がおやりになっているのは、30テーマを選びましたというだけだ。金額すらまだ決まっていない。選んで、金額が決まって、その後、契約が行われて、さらに支援機関を選んで契約していくというプロセスをとる。従って、今執行を止めるも何も、その2段階くらい前の状況にあるわけだ。そこは理解しておいていただきたい。

文部科学副大臣 鈴木 寛 氏
鈴木 寛 氏
(すずき かん)

鈴木 寛(すずき かん)氏のプロフィール
兵庫県生まれ、1982年灘高校卒、86年東京大学法学部卒、通産省入省。情報処理振興課総括課長補佐、電子政策課総括課長補佐などを務め、中央大学総合政策学部の講師も。99年通産省退職、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス環境情報学部助教授に。NPO法人スポーツ・コミュニティ・アンド・インテリジェンス機構を設立。2001年参議院議員初当選(東京選挙区)。参議院文教科学委員会理事、民主党政策調査会副会長、「次の内閣」文部科学副大臣などを歴任、09年9月18日から現職(教育、スポーツ担当)。

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