アーカイブ - レポート - 江戸時代からの古き技術と現代のロボット研究『からくり人形とロボット』

第4回「人間型ロボットの開発意図は?製作者が語る!」

国立科学博物館 主任研究官 鈴木一義 氏/千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 所長 古田貴之 氏

掲載日:2006年6月28日

皆さん、ロボットって何だと思います? ロボットというとガンダムとか想像しますよね。ああいう人間型のロボットがロボットだと思ったら大間違い。感じて、考えて、動く賢い機械は、皆、ロボットなんです。今、家だってロボット。エレベータだってセンサがついていて、ちゃんと考えて動きます。

車だってそうです。最近は自動で駐車までできます。感じて、考えて、動く。ロボットというのは機械としては、センサがついて、コンピュータがついて、モーターとか動く部分があります。でもそれだけだと、ただのボディだけ。そこに感じるための認識認知の学問、考えるための人工知能、そして動くための運動制御という技術が魂として入って、初めてインテリジェントの機械として完成するんです。

一つ例として人間型ロボットのmorph 3を紹介します。これは我々がかつて開発した人間型ロボットです。『人間型ロボットだけがロボットでない』って言ったのに「人間型かい?」っておっしゃるでしょう、皆さん。違うんです。

morph3(科学技術振興機構ERATO北野共生システムプロジェクトとリーディング・エッジ・デザインで共同開発<)
morph3
科学技術振興機構ERATO北野共生システムプロジェクトとリーディング・エッジ・デザインで共同開発

このロボットは実は、感じて、考えて、動く、そういう魂の技術を研究するためのモルモットです。morph3は掃除はしてくれない。このロボットで感じて、考えて、動く技術を研究している。この技術を使っていろんなものを進化させよう。それを私たちはやろうとしています。

たとえば「ハルキゲニア01」というロボット技術を使った未来の乗用車があります。人間型ロボットのmorph3とハルキゲニアは、姿形は違います。でも、中身の科学の部分は全く兄弟関係です。

まずはmorphから。このmorph君、手足全部に計14のコンピュータが入っています。それらがすべてネットワークでつながっています。また138個のセンサがついていて、たくさん感じて、考えて、動く。片足でバランスをとって動いたり、ちょっと急な階段を登ったりできます。全身のバランスの機能を使って、太極拳みたいなこととか柔軟体操もできます。

さて、これをどう車に応用したか。ハルキゲニア01、何だか虫みたいでしょう。仕掛けはロボットの裏側にあります。裏は足が8本入っています。この一つひとつの足がロボットになっています。つまり足にコンピュータのモーターもセンサもついていて、一つひとつが感じて、考えて、動けるロボットです。8体の足のロボット君が協力して御神輿を担ぐようにして動きます。そしてこの足のロボット君には3つ、機能がついています。車輪と足と手の機能です。

ハルキゲニア01(千葉工業大学未来ロボット技術研究センターとリーディング・エッジ・デザインで共同開発)
ハルキゲニア01
千葉工業大学未来ロボット技術研究センターとリーディング・エッジ・デザインで共同開発
Photo by Yukio Shimizu

まずは車輪の動きから。8本足を持っていて、4つ、4つ交互に切り換えることによって縦横無尽に動きます。でも、これだけだと「なんだ、ここは人間型ロボットと同じじゃないか」とお思いでしょう。

最大の特徴は手の機能。道路で段差を自分で見つけて車体を平らに保ったまま登る。今までこういうことをやる時にはカメラを使って段差を見つけようとしてきました。でも、カメラは真っ暗だと見えません。ロボット学者にしてみれば「そこに段差がある」と手さぐりで探しちゃえばいいと。人間だってそうでしょう。ここに人間型ロボットの技術が活用されています。使ってない足ロボット君をちょっと上に上げて、段差を触覚センサで探して、その情報を伝えます。同じように坂道も足ロボット君を駆使して角度を自分で感じて登ります。

3つ目の機能。歩く機能。ハルキゲニア01には人間型ロボットの姿勢制御、足を動かす技術が入っています。姿形は問題じゃありません。問題は魂、技術です。人間型ロボットだけがロボットではありません。今はエアコンだってロボット。リモコンに温度センサがついていて、それと本体のエアコンが通信しあって、部屋中に冷たい空気を送って、温度センサが働いて、そこに直接、風がいかないように賢く風を送ったりする。そんなことまでしてくれる。

ロボット技術。人間型のロボットだけがロボットだと思ったら大間違い。いろんなところに、あなたが知らないロボットの技術が入っています。これからロボットのすばらしい技術の世界を皆さんにお伝えしたいと思います。

「morph3とハルキゲニア01」
プロモーションビデオから抜粋
詳細ムービーは第6回目以降に公開予定
© fuRo(千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター)とリーディング・エッジ・デザイン
(再生時間:1分37秒 4,679KB)

 

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国立科学博物館 主任研究官 富田京一 氏
鈴木一義 氏
(すずき かずよし)

鈴木一義(すずき かずよし) 氏のプロフィール
専門は科学技術史で、日本における科学、技術の発展過程の状況を調査、研究をしている。特に江戸時代から現代にかけての科学、技術の状況を実証的な見地で、調査、研究をしている。
これまでに、経済産業省「伝統の技研究会」委員、大阪こどもの城、トヨタ産業記念館、江戸東京博物館、その他博物館の構想委員や展示監修委員などを歴任。

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 所長 古田貴之 氏
古田貴之 氏
(ふるた たかゆき)

古田貴之(ふるた たかゆき) 氏のプロフィール
独立行政法人 科学技術振興機構 北野共生システムプロジェクトのロボット開発グループリーダーとしてヒューマノイドロボットの開発に従事。2003年6月より千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長。2002年にヒューマノイドロボット「morph3」、2003年に自動車技術とロボット技術を融合させた「ハルキゲニア01」を開発。

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