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ブルーバックスがきっかけで物理の世界へ

北海道大学 電子科学研究所 助教授 竹内繁樹 氏

竹内繁樹 氏(北海道大学 電子科学研究所 助教授)

竹内繁樹 氏(北海道大学 電子科学研究所 助教授)

 

科学に興昧を持った最初のきっかけは、小学校2~3年生の時に読んだ「学研まんがひみつシリーズ」という子ども向けの漫画でした。

その本をきっかけに科学方面の本をよく読むようになって、次にハマったのが「ブルーバックス・シリーズ」(講談社の新書。科学全般の話題を一般向けに解説する)。量子に出会ったのもブルーバックスのおかげです。

家庭の事情もあり、また社会に出てみたいという意識もあって、修士を卒業した後は三菱電機に就職しました。そこでは幸いにも様々な基礎研究を行っている部署に所属することができました。

私の入社1年目のミッションは2つありまして、1つは「新しいテーマを1年間かけて探すこと」。当時(1992年)は、量子計算はほとんど知られていなかったのですが、94年にショアが発表した因数分解のアルゴリズム(量子コンピュータ上で量子情報処理を行うための、量子の重ね合わせ状態を利用した方法理論) を知って、「これだ!」と直感しました。

量子計算機が実現できれば、今の計算機よりも圧倒的な速さで処理できるからニーズもある、これから伸びていく分野だと思ったんです。量子計算のアルゴリズムを実験的に証明すると決心したのですが、その時(95年)には、会社の基礎研究部門の縮小化が議論されはじめていました。基礎研究部の存続のために、部の同僚もすばらしい研究成果を出したのですが、結果を出しても残念ながら方針はくつがえりませんでした。

基礎研究部が縮小されてしまうと、量子計算は実現可能性が低いですから、会社の予算だけではできないという判断になりました。そんな時、JST(科学技術振興機構)の基礎研究助成の「さきがけ研究」に受かって研究費が獲得できれば量子計算の研究ができる、ということで応募しました。

そして、幸いにも採択していただいて、また会社からも全面的なバックアップを受けることができて、3年間の研究の後、実験的に実現できたわけです。

  • 「科学者になる方法-第一線の研究者が語る」(東京書籍)から転載
  • 竹内繁樹 氏の研究について:
    ミクロの世界では量子が「0」であり、かつ「1」でもある、という複数の状態を同時に持つということが起こりうる。この性質を利用したコンピュータが実現できれば超高速なコンピュータが可能になる。竹内さんは単一の光の量子(光子)を用いて量子計算の理論を初めて実証した。

 

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