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「バイオミメティックな『光るどろだんご』ワークショップ、北大総合博物館で開催」

SciencePortal特派員 成田 優美

掲載日:2013年4月15日

"どろだんご" の表面で起きる自然の造形美・形の不思議を体験してみませんか―。北海道大学総合博物館が参加を呼びかける「光るどろだんご」ワークショップに興味を引かれ、のぞいてみた。

「光るどろだんご」は、やきもの用粘土を直径約6センチメートルの球体にした「タネ」を使って作るもので、愛知県常滑市にある“やきもの”の体験型文化施設「INAXライブミュージアム」の磯村司さんが考案したという。ワークショップは同博物館3階の企画展示室を会場に、今年1月から3月まで6回にわたり開かれ、講師には磯村さんや第8回バイオミメティクス市民セミナーで講師を務めた井須紀文さん(株式会社LIXIL)のほか、市民セミナーのポスターを手がけているデザイナーも加わった。

各回は定員7人で、私が見学した第5回目のワークショップには、子供5人、大人2人が参加した。井須さんがまず花崗(かこう)岩が土になる歴史や、泥だんごが光るわけをやさしい言葉で話した。原理は「粘土の粒子は、2マイクロメートル以下と非常に細かく、扁平(へんぺい)な形をしている。それで泥だんごの表面はざらざらして光を乱反射する。ガラス瓶の口で、表面を押さえつけるようになめらかに磨くと、粘土の粒子がきれいに並び、光を反射して光沢が出る」という。

◇作り方◇ カップのようなもののヘリで、泥だんごが真球になるように表面をなめらかに削っていく。次に5色の泥絵の具(赤・青・黒・薄茶・緑)を、好みで掌(てのひら)に少しとって薄く延ばす。泥だんごを手で転がしながら、表面に色を移し、模様を描く。さらに掌で転がしながら表面を乾かす。先の方法で磨くと光ってくる。完成まで約1時間半。

それぞれの作業の手順ごとに、きれいに仕上がるコツが教えられ、小さな子も一生懸命取り組んでいた。花や水玉の可愛い絵柄や大胆な色づかいなど、子供たちの伸びやかな表現に感心した。

どろだんごは10日ほど立つとすっかり乾燥して、淡い色になる。色のつけ具合によっては大理石、あるいは金属のような光沢を帯びる。予想外の色調が生まれ、一段と美しくなるかどうか、どきどきする面白さがある。大人も夢中になるのもうなずける。「保育園でもやってみたい」といった問合せもあったという。

何かと「速さ」が競われる今日、地球の長い歴史で生まれた自然素材が、ゆっくり変化していくのを待つことは、わくわくする貴重な時間ではないだろうか。

すべてのワークショップ終了後には、計33人の参加者が仕上げた「どろだんご」の中から、4点が写真審査で優秀賞(LIXIL賞、北大総合博物館賞、ネーチャー・テクノロジー賞、市民セミナー賞)に選ばれた。4月6日に同博物館で表彰式が行われ、北海道大学名誉教授の下澤楯夫氏(第2回市民セミナー講師)から、賞状と記念品が贈られた。

今回の「光るどろだんご」ワークショップは、同博物館が2012年の2月から毎月開催している「バイオミメティクス(生物模倣工学)・市民セミナー」の関連イベントとして行われた。同セミナーでは、大学教員や公的機関、企業の研究者など、さまざまな分野の人が、バイオミメティクスについて講演している。欧米の取り組みや先端の科学技術の動向だけでなく、北海道開拓記念館の堀繁久学芸課長のように、北海道の昆虫の多様性をテーマに、郷土を再認識させてくれる講演もあった。会場の同博物館「知の交流コーナー」は、講師と参加者の距離が近く、対話的な雰囲気が生まれやすい。生の学問に直(じか)に触れる醍醐味(だいごみ)を、参加者に味わせてくれる。猛吹雪の日もほぼ満員だった。

さらに同博物館の2012年度の冬季企画展示「エコで粋!? 自然に学ぶ ネイチャー・テクノロジーとライフスタイル展」でも、バイオミメティクスを元にした技術や新しい暮らし方を紹介していた。同博物館の膨大な標本資料のうち、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による昆虫などの微細な表面構造の画像も展示され、好評だったようだ。

バイオミメティクスが“博物館”という場を得て、より親しみと理解を深めていると思われた。

「光るどろだんご」優秀作品の受賞者。右端は、下澤・北大名誉教授
「光るどろだんご」ワークショップ(第5回 3月3日)
子供たちも熱心に取り組んだ

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