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レポート - 大学等レポート -

福島原発事故を英語でレクチャー、北大で外国人対象に

札幌市在住 成田優美

掲載日:2011年4月19日

全員が起立して黙とう
東北大震災から1カ月を迎えた4月11日、北海道大学で特別講義「Latest Information on the Fukushima Nuclear Plant Accident」が開かれた。福島第一原子力発電所の事故に対する在留外国人の不安を軽減するために、北海道大学が主催した英語による情報提供である。

このような会はあまり例がないのではと思い出かけると、やはり終了後、参加者が先生方に直接質問する姿や、ロビーで外国人同士が意見交換する様子が見られた。当日のアンケート用紙にどのような感想や意見、要望が書かれただろう。今後大いに活かされることを願う。外国人の方々の安心感はもちろん、日本人に対する信頼感が深まってくれれば幸いだ。

今回、同大学の外国人留学生約1,400人や外国人研究者とその家族だけでなく、札幌近郊の外国人も対象に広報された。そして定刻の18時、会場の学術交流会館講堂(定員310人)を埋め尽くすかのように、さまざまな国や年代の方々が集まった。

開会の前に全員が起立して黙とう。同大学国際本部の本堂武夫本部長が趣旨を述べ、ごあいさつした。本堂氏は地図でパリとマルセイユ間などを例に、札幌と福島との距離(630キロメートル)や位置関係を説明した。またプログラム内容を紹介、専門家の講義によって科学的な理解が深まることを期待した。

最初は、島津洋一郎教授(福井大学附属

国際原子力工学研究所、北大名誉教授)による「原子炉と放射線について」。島津教授は原子炉物理・工学、炉心制御・管理がご専門で、福島原発で何が起こったかを主軸に、沸騰水型軽水炉の形状や燃料システム、地震や高さ15メートルの津波がもたらしたダメージを説明、さらに放射性物質や放射線の種類や特徴、外部および内部被ばく線量や日常生活における放射線量など多岐にわたってお話しされた。

次に杉山憲一郎教授(北大工学研究院原子力安全工学研究室)の「チェルノブイリとの違いについて」。チェルノブイリ原発の構造、事故原因と放射性物質、福島原発との比較、広島・長崎の被爆と生存者、長期間の低線量被曝、弱い放射線によるDNA損傷の修復機構とサバイバルのメカニズム、放射線の人体への影響と安全基準値、ミルクや野菜、肉・魚についてIAEA(国際原子力機関)と日本の食物安全基準を対照などのほか、女川原発にも言及された。

続いて藤吉亮子准教授(同大工学研究院)の「環境放射性物質について:工学部における測定データ」。藤吉准教授は、まず放射性核種(radioactive nuclide)の性状など基礎知識を講義。工学部における原発事故後の空間線量率について、詳細な数字を挙げながら、平常レベルであることを説明された。同様に空気中のダスト状の天然および人工の放射性物質の「核種分析」データも極めて低い値とのこと。

最後に三寺史夫教授(同大低温科学研究所)が「東日本沖の海洋循環について」と題して北太平洋や日本周辺の海流、特に親潮と黒潮が合流する地域の特質と重要性、放射性濃度の観測、海洋研究開発機構によるJCOPE(日本沿海予測可能性実験)の研究、数値モデルによるシミュレーションなど画像を示して解説された。

質疑応答に移ると質問が相次いだ。食物の安全性、泊原発への心配、北海道の海岸への影響のほか、日本と海外のメディアの違いや情報開示について非常に関心の高いことがうかがえた。

在留外国人の方々の情報不足は言語の違いだけが原因だろうか。国内の日本人が確かな情報を十分に得られていれば、外国語のできる人は身近な外国人に伝えてあげられる。ともかく原発事故は健康に対する不安を伴う。海外からの留学生だけでなく日本人に対しても科学的、医学的な見地からのさらなる説明の機会が必要とされているように感じた。



追伸:
講義内容は後日、北海道大学のオープンコースウェアで公開されるそうです。
http://ocw.hokudai.ac.jp/index.php?lang=ja

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