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《JST共催》SDGs達成とその先の未来のために―資源・エネルギー問題を考える「サイエンスアゴラ in 京都」を開催

「科学と社会」推進部

掲載日:2019年10月9日

科学と社会をつなぐ日本最大級のオープンフォーラム「サイエンスアゴラ」は、科学技術振興機構(JST)が主催して2006年度から毎年、東京・お台場地域で開催されてきた。今年は11月15日(金)から3日間の日程で開催される。テーマは「Human in the New Age ―どんな未来を生きていく?―」。

Human(人)の未来、つまり未来に向かって私たちは何を選びどう生きていくのかを、さまざまな視点から考える機会を提供する。期間中、トークセッションやブース展示など140を超える企画が予定されており、主催側は多くの来場者を期待している。

「サイエンスアゴラ」は東京だけで開催されるものではない。JSTは「サイエンスアゴラ」のビジョンやテーマを共有する機関とともに、日本の各地域において共創活動の振興を図る連携企画を実施している。あらゆる人々が対話・協働し、それを政策形成や知識創造、課題解決へ結びつけることが狙いだ。そのうちの一つとして6月27日(木)には、京都大学との共催で「サイエンスアゴラ in 京都」が開かれている。今後も、東京での開催に先立って11月5日(火)~6日(水)には「サイエンスアゴラ in 仙台」が、また11月9日(土)は「サイエンスアゴラ in 神戸」が開催される予定だ。

「サイエンスアゴラ in 京都」は、「京都大学《超》SDGsシンポジウム 資源・エネルギーと持続可能性」として京都大学が主催、JSTや「関西SDGsプラットフォーム」ほか、複数による共催で進められた。この企画は、2018年10月に開催された「食と持続可能性」のシンポジウムに続く第2弾だ。「SDGs」とは国連の「持続可能な開発目標」のことで、「《超》SDGs」というタイトルには、生態系や地域を含む地球社会的な視野で世代を超えた構成員の英知を集め、多様な議論や営みを持続させるという決意が表れている。登壇者は1000年以上の歴史を持つ都、京都にちなんで和装で臨んだ。1日かけて開催されたシンポジウムには延べ800人が参加し、活気ある内容になった。

「資源・エネルギーと持続可能性」と題した「サイエンスアゴラ in 京都」の案内板
「資源・エネルギーと持続可能性」と題した「サイエンスアゴラ in 京都」の案内板

シンポジウムは午前と午後の2部構成で、複数の企画が並行して進められた。第1部は「資源・エネルギー問題を起点に、パートナーシップでSDGsに挑む」と題した産官学によるパネルセッション。第2部は地方創生SDGs官民連携プラットフォームのもと、JSTが設置した地域産学官社会連携分科会の公開ワークショップだった。そのほか、さまざまな専門家とともに考えるパネルセッション、学生や若手研究者らによるポスター発表、挑戦的なワークショップなどがあり、会場は熱気に包まれていた。全体を通して、SDGsで掲げられている資源・エネルギーの課題解決、特に気候変動や気候変動に密接に関連するエネルギーの問題をテーマに、活発な議論が繰り広げられた。以下、各セッションやワークショップの詳細を紹介する。

「誰一人取り残さない」SDGsや未来の地球のために産官学が討論

シンポジウムの冒頭、京都大学の山極壽一総長がビデオレターであいさつ。続いて北野正雄理事が資源・ごみ問題や気候変動、エネルギーの問題に対する産学官連携と京大の取り組みについて紹介した。複数の課題に大学全体で取り組んでいくという。

ビデオレターであいさつする京都大学の山極さん
ビデオレターであいさつする京都大学の山極さん
京都大学の北野さん
京都大学の北野さん

パネルディスカッション「資源・エネルギー問題を起点に、パートナーシップでSDGsに挑む」は、産官学連携に向けた視座・ヒントを得ることが狙い。資源・エネルギー問題に関する国や地域、企業の先端の取り組みが紹介され、SDGs 達成やその先を見据えた議論が行われた。このシンポジウムは、京都大学と京都市、企業からなる「京都産学公SDGsプロジェクト」の取り組みの一環でもある。

パネルセッション「資源・エネルギー問題を起点に、パートナーシップでSDGsに挑む」登壇者
パネルセッション「資源・エネルギー問題を起点に、パートナーシップでSDGsに挑む」登壇者

「全国市区・サステナブル度・SDGs先進度調査」で首位となった京都市の門川大作市長は、「京都創成」の歴史を踏まえ、「自分事」という意識を重視し、すべての市民が参加したまちづくりを進めていくという目標を紹介した。

「自分だけが良ければ良い、という考えから、誰一人取り残さない、というSDGsへ」

門川市長は、京都ならではの文化芸術や大学を起点とした活動、地域力を活かしてのレジリエントな震災支援・防災対策のほか、「こんちきジーズ」と呼ばれる祇園祭創始1150年記念プロジェクトなどについて説明。祇園祭と持続可能性、SDGsの精神との共通性について熱く語った。

「こんちきジーズ」とは、祇園祭の変遷や実態を調査し、祇園祭の意義や人々の思いなどを京都の大学生と社会人がグループワークで学ぶ活動だ。初回は今年5月に京都大学で行われた。さまざまなキーパーソンが参加し、SDGsと祇園祭りに関する考察も行われている。

京都市の門川大作市長
京都市の門川大作市長

産業界を代表して登壇した株式会社リコーの山下良則社長は、気候変動対策や対策の一つとしてのエコ活動に産業界全体で取り組むことや、世界の中での日本企業の存在感向上が重要であると訴えた。リコーは、事業運営を100パーセント再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟する国際イニシアティブ「RE100」(Renewable Energy 100%)に日本企業として初めて参加表明しており、この分野で先駆的な企業として知られる。

山下社長は「私たちは祖先からこの地球を受け継いだのではない。未来の子供たちから預かっているのだ」というネイティブアメリカンの格言を取り上げて、温室効果ガスの排出抑制を進めて脱炭素社会を実現することの意義を説明。1994年からリコーグループが掲げる「コメットサークル」で提唱されている資源循環の考え方や、サプライヤー(商品の供給者)や消費者と協力して取り組む資源循環の取り組みを紹介した。

株式会社リコーの山下良則社長
株式会社リコーの山下良則社長

JSTからは真先正人理事(当時)が登壇。SDGsは、国際的な課題であると同時に国内の課題でもあると捉えて総合的な視点を持ち、自分事として考えることが重要、と指摘。その上で、SDGsの社会課題解決に必要な科学技術について考える場作りとしてJSTの事業「Solve for SDGs」や「STI for SDGsアワード」などを紹介した。

JSTの真先さん(当時)
JSTの真先さん(当時)

この後の討論では、京都大学環境科学センターの酒井伸一教授がファシリテーターとなって、各界の登壇者と意見交換した。真先さんは「科学技術におけるイノベーションには、先回りしながら社会課題をバックキャスティングで解決していくことが求められている。若手研究者が十分に活躍できる場を作り、研究現場と社会の距離を縮め、つなぎ、取り組みを支えていくことがJSTの役割だ」と述べた。

討論する真先さんら登壇者
討論する真先さんら登壇者

未来のまちとスマートモビリティを私たちがデザイン

午後は第2部として内閣府「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」のもとにJSTが設置した「地域産学官社会連携分科会」の公開ワークショップ「わたしのまちのスマートモビリティ2030」が行われた。

ここには行政・地方自治体、交通事業、モビリティ企業、金融機関の関係者のほか、研究者、学生、一般市民など約140人が参加。さまざまな人にとって魅力的で、環境に優しく、また持続可能な未来の街の交通とは何かや、地域交通に関わる課題解決の方法などについて活発に意見交換された。

公開ワークショップ「わたしのまちのスマートモビリティ2030」の案内板
公開ワークショップ「わたしのまちのスマートモビリティ2030」の案内板

第2部はさらに「インプットトーク」と「パネルディスカッション」で構成された。インプットトークには、地域の社会課題やまちづくり政策、課題解決に貢献する取り組みなどについて、京都市を中心に活躍する企業や公的機関などから15人が登壇し各機関の実践内容を紹介した。

パネルディスカッションは「まちの移動をSDGsの視点から考える—わたしのまちのスマートモビリティ(持続可能な交通/移動)を作るために私たちができること―」と題し、前半のインプットトークの発表を踏まえながら、地域における未来の交通や移動に関する課題について活発な議論が展開された。

登壇者は、ファシリテーターを務めたJST「科学と社会」推進部の荒川敦史部長、京都大学大学院工学研究科のシュマッカー・ヤンディャク准教授、名古屋大学未来社会創造機構の手嶋茂晴特任教授、京阪バス株式会社の大久保園明主任、一般社団法人システム科学研究所の東徹部長、scheme verge株式会社の須田英太郎Regional Coordination Directorの6人。

公開ワークショップ「わたしのまちのスマートモビリティ2030」のパネルディスカッションの様子
公開ワークショップ「わたしのまちのスマートモビリティ2030」のパネルディスカッションの様子

「まちづくり」は防災の観点だけでなく、子ども、女性、高齢者、障害者などのニーズにも配慮する必要がある。特に交通に関するニーズ、その地域にふさわしい移動手段は重要だ。

ディスカッションで名古屋大学の手嶋さんは「よくある、未来の街づくりのビジョンに心を動かされないのは、車両や電車など『街』ではないものばかりが描かれ、ストーリー性が見えないから。モビリティの前に『どういう生活がしたいか』があるべきだ」と指摘。未来のモビリティを活用したシナリオを、街の視点から、街全体で描く必要がある、と語った。

この発言に共感したscheme vergeの須田さんも「モビリティありきで入ってはだめで、モビリティがどう重要なのかを考えることが大切。小豆島でも『小豆島をどういう島にするか』を設計時の議論の留意点にした。自動運転ありきではなく、交通事業者以外の地場産業関係者や校長先生、高校生も参加してこれからの地域をどうするかを考えることから議論した」と、小豆島での自動運転に関する集会を例に、街全体で議論することの重要性を指摘している。

scheme vergeの須田さん(左)。名古屋大学未来社会創造機構の手嶋さん(右)
scheme vergeの須田さん(左)。名古屋大学未来社会創造機構の手嶋さん(右)

JSTの荒川さんは「住み続けられる『まちづくり』に必要な技術は、開発段階から産官学で取り組んでいく必要があり、実証フェーズになれば市民の参加も必要になると思う。交通計画を立てるにしても事業者側と市民の相互理解も必要でしょう」と、産官学だけでなく市民とのつながりも重要であることを強調した。

ファシリテーターのJSTの荒川さん
ファシリテーターのJSTの荒川さん
会場には約140人が参加した
会場には約140人が参加した

ディスカッションの質疑応答では、「ドア・ツー・ドアの自動運転による送迎など、使う側の視点に立ったサービスを提供できる可能性はどの程度あるのか」「技術はもっと進んでいるはずだが、社会実装は今後進むのか、そのための工夫は何か」といった質問が出された。これらの質疑を通じて、未来のまちや交通・移動に必要なテクノロジーについて使う側と作る側で視点の共有があった。

「技術ができたら問題は解決」ではなく、社会実装に向けて自分事として捉え、「要るもの」「要らないもの」を考えていくことが大切である――ディスカッションを通じてそんなメッセージが伝えられた。

科学技術による社会課題解決のあり方についても活発な議論が行われた。地域住民や地場産業に携わる人と地域の未来像を議論・共有した上で、科学技術を活用することが重要と総括された。

第2部の公開ワークショップ「わたしのまちのスマートモビリティ2030」の最後に、JSTの真先さんは、「SDGsが共通言語となって問題意識の共有や意見交換があった。そこから新しいことが生まれると思う。(この日の議論を)一つのイベントに終わらせず、若手からベテランまで次につなげることが大切だ」などと締めくくった。

公開ワークショップの閉会あいさつをするJSTの真先さん
公開ワークショップの閉会あいさつをするJSTの真先さん

SDGsをもっと理解するために

「サイエンスアゴラ in 京都」ではこのほか、学生と社会人の混成による国際ポスターセッション、SDGs入門セミナーや超SDGs道場など、SDGs達成やその先の未来を見据えた企画も同時並行して展開した。

トークセッション「SDGsに関するもやもや感を少しでも解消!『超SDGs道場』」では、JSTの「サイエンスアゴラ委員会」の委員を務める京都大学学際融合教育研究推進センター准教授の宮野公樹氏、京都大学総合人間学部自然環境学科の酒井敏教授や「エコ~るど京大」のメンバーを中心に約100人が参加し、SDGsに対するさまざまな疑問や意見が出された。SDGsについて会場の一人一人がふだんから感じている違和感や戸惑いなどを解決するために、最新のオンライン投稿システムも活用、熱い議論が続いた。「エコ~るど京大」は地域を巻き込みながら「持続可能なキャンパス」の実現を目指す全員参加型の団体だ。

ここでは、大人だけでなく、小学生が意見を述べる場面も見られた。

「今ある暮らしは、今の大人が作ったもの。大人の皆さんには将来の世代がどうしたら生きやすいかを考えてほしい。将来大人になった時に困らないように今から(対策を)考えていきたい。一人一人が自分にできることは何か、考えていくことが大切だと思う」

大人たちに向けられた若い世代からの想いに、会場から盛大な拍手が送られた。

また、若手研究者を中心とした気候変動と資源循環に関するポスターセッション「レジリエントな低炭素社会の構想」では、未来の担い手となる若い研究者が互いにじっくりと意見を交わす場面が多く見られた。

「SDGs事始めワークショップ」は、来場者らにSDGsの基本的な理解を深めてもらい、《超》SDGs的視点への足掛かりを得てもらうのが狙い。学生と社会人が世代や専門分野を超えて活発な意見交換をしていた。

このほか、企業・団体向けセミナー「SDGs入門」は、企業にSDGsを自分事としてとらえてもらうためのセミナーやミニレクチャーとして企画された。SDGs 達成に向けた取り組みは、今や企業活動にとっても重要だ。

ポスターセッション「レジリエントな低炭素社会の構想」の様子
ポスターセッション「レジリエントな低炭素社会の構想」の様子

若い世代の熱い想いと積極的な活動に期待

今回の「サイエンスアゴラ in 京都」は、大学生による積極的なエコ活動と、彼らの環境・資源に関する意見表明が輝いていた。

例えば、第1部と第2部の間に開かれた「エコ~るど京大」の学生によるエコ宣誓「京都大学プラヘラス宣言~減らしながら考え、考えて減らす。~」や、第2部の公開ワークショップの大学4年生(同志社大学の代表2名と京都大学の代表1名)による人口減少・過疎地・ワークライフバランスなどの課題を主としたショートトークなど、SDGsに対する個人の関わり方を考える企画が目を引いた。

「京都大学プラヘラス宣言」では、京都大学の学生が身近なところからプラスチックを減らす努力をし、プラスチックの循環を進めながらプラスチックを減らすことを宣言している。強い意気込みを感じる。

学生の発表も盛況だった。「自動運転車による日本の通勤改革」をテーマに研究した同志社大学政策学部4年生の和田葵さんと小﨑薫さんは、経済の視点と長時間労働の改善という視点から、働きやすい環境づくりが持続可能な社会の仕組み作りにつながるという提案を発表した。

京都大学農学部4年生の山口真広さんは「山間地域の交通における不便性改善のための取り組み」と題して、「エコ~るど京大」での活動事例を紹介した。交通問題を軸に人と人とのつながりが強くなるような街にしたいという。

学生によるショートトークの様子
学生によるショートトークの様子

SDGsの17番目の課題は「パートナーシップで目標を達成しよう」だ。身近な課題を社会・経済・環境という3つの異なる視点から総合的に検討する学生たちの提案は、一般の人にも分かりやすい内容だった。「自分事」として考えやすく「SDGsの視点を持って課題解決を考える」きっかけになったと感じられた。また、さまざまな課題を「自分事」として考える学生たちの参加は会場に活気を与えていた。若い世代が中心になって活動する姿や、そうした活動の成果を実感できるのは「サイエンスアゴラ」の連携企画ならではだろう。

気候変動や海洋プラスチックなどの地球環境問題は、今大きな転換期を迎えている。SDGsの達成やその先にある未来社会の創造のために、私たちができることは何か。それらの実現は容易なことではない。しかし、今回詳しくレポートした「サイエンスアゴラ in 京都」のような「対話の場」を通じて少しずつ課題解決を目指すことは、私たちの未来をつくるきっかけになるのではないだろうか。

(JST「科学と社会」推進部 文・瀧戸彩花、写真・石井敬子)

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