レポート

「暫定組織で科学技術重要事項を議論 - 第2回科学技術イノベーション政策推進懇談会」

2012.02.13

増渕 忍 / 科学技術振興機構 産学連携展開部

 2012年1月に入り、科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議(CSTP)が形式上は存在しない状態に陥っています。臨時国会で有識者議員3人の人事が採決されず、後任を任命していないことにより、総合科学技術会議が法令上の要件を満たしていないからです。そのため、現在、「科学技術イノベーション政策推進懇談会」という懇談会形式で、科学技術の重要事項が議論されています。

 2011年8月に閣議決定された第4期科学技術基本計画にある「国は、総合科学技術会議(もしくは、これを改組した「科学技術イノベーション戦略本部(仮称)」)の調整の下で、「科学技術イノベーション戦略協議会(仮称)」(以下「戦略協議会」という)を創設する」という方針のもと、内閣府は、11月から「科学技術イノベーション政策推進のための有識者研究会」を複数回開催し、12月にCSTP改組後の科学技術政策の新しい「司令塔」をどうするか、考え方をまとめました。現在のところは、この「懇談会」が、科学技術政策の司令塔としての機能を背負っているということになります。

 ただし、この「懇談会」のメンバーは、次期総合科学技術会議のメンバーとなる予定の有識者で構成されていますので、科学技術政策の「司令塔」が機能不全に陥っているというわけではありません。1月26日に開催された第2回の懇談会でも、CSTP (もしくは科学技術イノベーション戦略本部)が機能し出すと、この懇談会が、「科学技術イノベーション政策推進専門調査会」(以下、「専門調査会」という)という看板になり、同じメンバーで、第4期科学技術基本計画の推進にあたっての基本的な考え方を議論する場になるという主旨の発言がありました。

 第2回懇談会で議論された主な議題は、専門調査会と前述の「戦略協議会」の関係性や、戦略協議会の設置対象、平成25年度予算編成プロセスへの対応といったものでした。

 特に、戦略協議会の設置対象としては、当面、(1)グリーン・イノベーション、(2)ライフイノベーション、(3)復興・再生、という第4期科学技術基本計画の第Ⅱ章の三本柱について設置し、それ以外の政策課題である「産業競争力」「国家基盤」「国民生活」「基礎研究」「人材育成」については、保留もしくは、戦略協議会と別な枠組みとして、実質的な下部組織を組織するという方向性となるようです。もっとも、この方針は、三本柱以外の政策課題が重要ではないということではなく、戦略協議会は、達成目標や資金配分のあり方などについて、計画・実行・評価・改善(PDCAサイクル)を綿密に回すことになっており、長期的な視点で対応していくべき課題については、別な枠組みで検討することになるという点が強調されていました。

 冒頭に記載したとおり、CSTPは法的には存在しないという異常な状態になっていますが、懇談会形式で科学技術政策の司令塔機能は機能しています。特に、大震災からの復興・再生という喫緊の課題に科学技術がどのように貢献すべきなのかという点については、早急に戦略協議会が組織され、議論が加速していくことに期待したいと思います。

  1. 日時:平成24年1月26日(木)16:00~18:00
  2. 場所:中央合同庁舎4号館(4階)共用第4特別会議室(東京都千代田区霞が関3-1-1 TEL 03-5253-2111)
  3. 議事
    (1)第4期科学技術基本計画の推進について
    (2)その他
  4. 懇談会メンバー:CSTP相澤益男議員、奥村直樹議員、今榮東洋子議員、白石隆議員、大西隆議員、青木玲子教授(一橋大学)、石川幹子教授(東京大学)、上山隆大教授(上智大学)、春日文子氏(NIHS)、北城恪太郎氏(日本IBM)、久間和生氏(三菱電機)、小谷元子教授(東北大学)、庄田隆氏(第一三共)、中鉢良治氏(ソニー)、中馬宏之教授(一橋大学)、成宮周教授(京都大学)、平野俊夫総長(大阪大学)、松本紘総長(京都大学)

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