レポート

第24回日本国際賞(Japan Prize)の受賞記念講演会

2008.05.09

国際科学技術財団 / 財団法人

 2008年4月22日、ホテルニューオータニにて国際科学技術財団が主催する第24回日本国際賞(Japan Prize)の受賞記念講演会が行われました。日本国際賞とは全世界の科学技術者を対象とし、独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、もって人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められた人に与えられる賞です。今年度の受賞者は、「情報通信の理論と技術」分野ではインターネットのネットワーク設計概念と通信プロトコルの創生に貢献したヴィントン・サーフ博士(64歳)とロバート・カーン博士(69歳)が共同受賞者として選ばれました。また、「ゲノム・遺伝医学」分野では遺伝医学の確立と発展への貢献でビクター・マキューズィック博士(86歳)が選ばれました。

 受賞記念講演には多くの方が参加され、参加者の中には将来の科学を担っていく学生の姿も見られました。

 以下、講演の内容について簡単に紹介したいと思います。

ビクター・マキューズィック博士 演題「遺伝医学とゲノミクス:この60年をふり返って」

ビクター・マキューズィック博士

 15歳のときに長期間の感染症にかかった私は否が応でも医学と接することになりました。そのためタフツ大学卒業後にジョンズホプキンス大学医学部に入学し、医学博士号を取得のうえ卒業しました。

 私が臨床遺伝学に関心を持つようになったのはインターンで唇のメラニン斑と小腸のポリープとが合併した患者に出会ったことがきっかけでした。その後、心臓医として働き始めたころにマルファン症候群と「結合組織の遺伝的障害」と名づけたその他の障害に関心を持ち、今もその関心は続いています。

 研究では、遺伝疾患の分類と遺伝子のマッピングを行ってきました。私は同僚と共に特定遺伝子の1番染色体への初のマッピングに成功しました。最近では、マルファン症候群もマッピングすることに成功し、原因遺伝子も特定できました。そして治療のメカニズムもわかり、有望な結果も出ています。

 また、私は「ヒトのメンデル遺伝」と題する本を出版し、現在ではオンライン版のOMIMができました。

 私は医学・遺伝学における60年余りのキャリアのすべてをジョンズホプキンス大学と同病院に捧げてきましたが、その間、研究・指導・患者ケアを総合的に追及できたことを光栄に思います。

ヴィントン・サーフ博士 演題「インターネットへの道のり」

ヴィントン・サーフ博士

 私が子供だったころ、いつもたくさんの本と教育熱心な家族に囲まれていました。私は本の虫で子供の頃から相当数の蔵書があり、12歳ぐらいの頃は様々な実験を描いた実用書がお気に入りでした。その頃、科学実験セットを持っており、よくそれで遊んでいました。また、数学にも興味があり、上級生用の教科書の問題を解いたりもしていました。

 数学への関心はすぐにコンピューターへの関心につながりました。ハイスクールの親友のおかげでUCLAにあるコンピューターを使わせてもらえるようになり、コンピューターを動かすプログラムを作りました。そして、父が働いていた会社には多くの子会社があり、夏休みにはそこで働くことができました。そこでは、アポロ計画のためのプログラムを書くなどの仕事をしました。その後、私はコンピューター関係の実戦経験がしたいと思い、IBMに就職し、オペレーティングシステムについて多くを学びました。

 インターネットの発明とその後の進化は1960年代初めにその基礎があります。発明は条件がそろわない限り実現しないというのは自明の理です。こうした条件は技術的なものかもしれませんし、経済的、社会的、政治的なものかもしれません。それらが合わさったものなのかもしれません。見方によっては、インターネットにつながる条件はこの全てに帰することができるでしょう。

ロバート・カーン博士 演題「ひらめきが宝」

ロバート・カーン博士

 私がコンピューターネットワーキングを研究するようになったとき、コンピューターネットワーキングが研究成果のあがる分野になると考えていた専門家はほとんどいませんでした。しかし、私はこの複数のコンピューターをつなぐというアイディアは面白いと思いました。

 私はアーパネット(ARPANET)のシステム設計で主導的な役割を果たすことができました。後に、2つの異なるパケットネットワークの開発に関わりました。そして、異なるネットワーク上のコンピューター間でどうやって通信させるのかという問題を、TCP/IPをサーフ博士と協力して開発したことで解決しました。

 私たちの成功は、進歩を促す適切なサポートを得られたこと、そして効果的なチームワーク、確固たる直観に頼った意思決定のたまものです。そうした決定・選択を実際に検証する機会を得た私たちは、何が機能し何が機能しないかの実例から学ぶことができました。

 インターネットが今後も革新的な人たちに導かれてその能力を進化させ、世界をより住みやすい場所にすることに貢献してくれることを願っています。

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