レポート - 科学館・博物館レポート -

「予感研究所2 アート+テクノロジー+エンタテイメント=?! 研究者たちの自由研究?」

常盤 拓司 氏(東京大学大学院工学系研究科 特任研究員(CRESTデジタルメディア領域松原仁チーム))

掲載日:2008年8月29日

2008年7月26日から30日の5日間にかけて、東京お台場の日本科学未来館で展覧会「予感研究所2 アート+テクノロジー+エンタテイメント=?! 研究者たちの自由研究?」が開催された。筆者はこの展覧会に推進委員会のメンバーとして企画の立ち上げからから実施に至るまで携わった。本稿ではこの展覧会について報告する。

この展覧会は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)「デジタルメディア作品の制作を支援する技術」領域(略称:デジタルメディア領域)において、現在取り組まれている研究を紹介することを目的に開催されたものである。領域としての展覧会の開催は「予感研究所アート+テクノロジー+エンタテイメント=?!」(2006年5月、日本科学未来館)に続いて2度目のものとなる。今回の展覧会では51件(前回は43件)の最先端の情報科学技術やヴァーチャル・リアリティ、インラクション、メディアアートなどに関連する研究成果や作品が実際に触ったり体験したりできる形で、かつ研究者による解説付きで展示された。会期中は親子連れを中心に約1万5千人の来場者があった。

このような展覧会をCRESTの研究領域が開催したのは、領域の目標である新しいメディアや芸術表現のための科学技術の創出のためには、研究者のような専門家からの研究に対する評価だけではなく、一般の人々からの評価が重要であるという領域としての考え方に基づく。一般からの評価において中でも特に子どもたちによる評価は重要である。子どもたちの図工の時間に紙や粘土、はさみやクレヨンなどの素材や道具を使い、ものを創ることの延長にこの領域の目指すデジタルメディアやそのための科学技術はある。そこで、展覧会は子どもたちが来場しやすい時期に、無料で公開することとした。

展覧会は、日本科学未来館の常設展示エリア外の、入館のためのチケット購入が不要の場所のうち、5箇所を使用して行なわれた。それぞれの場所には展示のコンセプトとゾーン名が与えられた。51件の展示は研究チームごとではなく、研究内容や展示物としての内容に基づき、それぞれのゾーンに割り振られ、展示された。展覧会は会場が分散し、かつ展示の数が多いことから、来場者には小さく折り畳まれたパンフレットが配布された。このパンフレットには、片面にはすべての展示の写真と概要が印刷され。もう一方の面には場所ごとの展示物リストとチェックボックスが印刷された。すべての展示について記載したのは、今回展示されたものの多くはこれまで国内では学会などの専門家の集う場所でしか公開されていないものが多く、資料となるようなものが出回っていないことから、来場者が追って資料として使用できるようにするためである。また、チェックボックスは展示の数が非常に多く、来場者が展示を見逃さないように、気になった展示をチェックできるようにしてもらうための配慮である。未来館内では会期中このパンフレットを広げ、どのゾーンから回るかなどを相談する親子連れやグループが散見された。

-各ゾーンでの展示の概要

わくわくルーム (1階シンボルゾーン)
田村チームの「MUSHA修行」は、Mixed Reality技術を応用し、本物の映画撮影用のセットの中で眼鏡型のディスプレイを装着した体験者が、主人公の視点でバーチャルな役者を相手に殺陣を体験したり、カメラマンとしてバーチャルな役者の動きを撮影したりすることができた。橋本典久氏らの「超高解像度人間大昆虫写真 [ life-size ] 」や「ZooMuSee」は、高解像度の写真撮影技術によって実現された作品である。前者は超高精細なデータから印刷された巨大壁画で、間近で見ても通常のプリンタで出力された写真同様の解像度をもつ。後者は高解像度の昆虫の写真アーカイブのソフトウェアである。
どきどきゾーン (1階オリエンテーションルーム)
どきどきゾーンの入口には、渡辺チームの「Inter Robot 身振りによるコミュニケーション促進ロボット」が展示され、来場者を出迎えた。また同時に番外として「ペコッパ」も展示された。「ペコッパ」はInter Robotの技術成果が応用された製品で、人の声の調子に反応しうなずく葉っぱ型のロボットである。その奥では、「Shadow awareness 影と一緒に遊んでみよう」などの展示が行われ、子どもたちが歓声をあげながら体験した。 どきどきゾーン全景
うきうきパーク (3階サイエンスライブラリー)
会場入口近くでは、岩田チームの「Feel Your Brain」は、脳活動計測技術を応用し、脳の活動状態を脳の模型上で温度の変化として表現することで触覚的に脳の動きを知ることができるシステムである。
また、会場奥では、領域の科学技術研究としての側面を全面に出した展示が行われた。
「年齢性別顔合成」(森島チーム)は、顔面を立体的に撮影し、年齢や性別を変化させる技術である。来場者は実際に顔を撮影し自身の顔を変化させ、結果のプリントアウトし持ち帰ることができた。また、自動作曲システム Orpheus(オルフェウス)は、音楽理論や音楽心理学、聴覚心理学などの知見を導入した自動作曲システムである。
うきうきパーク全景
あるあるカフェ (5階カフェ)
廣瀬チームの「GravityGrabber」は、指先に装着した装置によって何も入っていない透明の箱の中で目には見えないボールが転がったりする感覚を体験することができた。また三谷純氏の「折紙の幾何:折り線のパターンから生まれる形」ではコンピュータ技術によって複雑な幾何学的形状の折紙の作成を支援する技術が折紙の実例で紹介された。 あるあるカフェ全景
ゆらゆらホール (7階イノベーションホール)
串山久美子氏らの「硬軟感覚ディスプレイ「Magnetoshere」」は、多数の磁石が埋め込まれたテーブル型のディスプレイシステムで、磁力によって制御される多数の微小な鉄の粒によって、ディスプレイ上に固い場所と柔らかい場所を同時に作ることができる。武藤努氏の「Optical Tone : Dynamic Color Composition」は、傾きの角度や方向、手かざしなどによって発光色が変化するおきあがり小法師型のライトと、その光の影響で変化する壁面の色やパターンを体験できる。
ゆらゆらホール1(硬軟感覚ディスプレイ)ゆらゆらホール2(Optical Tone)


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