レポート - 英国大学事情 -

2013年3月号「大学進学希望者への大学情報の公開<National Student Survey結果とKey Information Sets>」

掲載日:2013年3月1日

英国在住30年以上のフリーランス・コンサルタント山田直氏が、新しい大学の生き方を求め、イノべーション創出、技術移転などに積極的に取り組む英国の大学と、大学を取り囲む英国社会の最新の動きをレポートします。(毎月初めに更新)

 

【1. はじめに 】

   イングランド高等教育助成会議(HEFCE)は、大学に関する情報をできる限り一般に公開するように各高等教育機関を指導している。その一環として、大学進学希望者が各大学やコースを比較できるように、「全国学生満足度調査:National Student Survey」の結果や「Unistats」という各種データを掲載したウェブサイトを立ち上げている。また最近では「Key Information Sets」と名付けたさまざまな大学情報の公開をも各大学に義務づけている。今月号では、これらの「全国学生満足度調査」と「Key Information Sets」の概要を紹介する。
   「学生満足度調査」の結果や「Key Information Sets」のデータは、各大学に対する品質保証の調査にも利用されるとともに、各大学が教育の品質を向上させるための手段としても利用されている。「全国学生満足度調査」は2005年の開始以来、毎年実施されており、質問内容などに改良を重ねてきた。なお、この調査の実施はHEFCEの委託を受けて、調査会社のIpsos MORIが行っている。

 

【2. 2012年度・全国学生満足度調査 】

【2012年度・学生満足度調査結果の概要】

(平均値)
主要調査項目 2011年度(%) 2012年度(%)
授業 84% 86%
アセスメントとフィードバック 68% 70%
教員によるサポート 77% 79%
組織と運営 75% 77%
学習のための各種リソース 80% 82%
パーソナル・ディベロップメント 80% 81%
全体的な満足度 83% 85%
学生ユニオン - 66%
NHS(National Health Service)助成学科の現場実習 84% 85%
   2012年9月、HEFCEは2012年度「全国学生満足度調査」結果を発表した。それによると、全体的な満足度が平均で85%となり、2005年の調査開始以来の最高準となった。
   調査対象となる項目全般にわたり、満足度は昨年度より改善している。特に、今まで常に満足度が最低であった「アセスメントとフィードバック」への満足度が昨年度の68%から70%に改善している。
   多くの大学進学希望者が志望校を選択する上で、学生ユニオン(student union)の活動状況の情報が有益であるとの希望が多くあったため、2012年度の調査から学生ユニオンに関する質問を追加した。なお、英国の大学の学生ユニオンは19世紀以来の歴史があり、自治組織として各種のsocietyや娯楽行事などの運営やメンバー学生への支援を行っている。また通常、キャンパス内に独自の建物を持っていることが多い。
   2012年度の当調査には、英国全土の154の高等教育カレッジを含む高等教育機関および106の継続教育カレッジ(further education college)が参加した。アンケート調査に回答した学生数は全員が最終学年度の学生で、前年比2万人増の287,000人であった。また、回答率は67%と、調査開始以来の最高を記録した。
   実際にどのような質問をしたのかを、参考までに紹介する。

【2012年度調査の質問事項】

授業
  • 教員の説明の仕方が良い
  • 教員は授業内容に熱意を持っている
  • 授業によって知的な刺激を受ける
アセスメントとフィードバック
  • 事前に採点基準が明確に説明されている
  • 評価や採点方法が公平である
  • レポートへのフィードバックが迅速である
  • レポートに対する具体的なコメントがあった
  • レポートへのフィードバックが今まで理解できなかった点を明白にした
アカデミック・サポート
  • 学習している科目に対して十分な助言と支援を受けた
  • 必要な時には、教員にコンタクトすることができた
  • 学習科目を選択する必要があった時、適切な助言を得られた
組織と運営
  • 自分の諸活動に関する限り、タイムテーブルは効率的であった
  • コースや授業の変更に関しては効果的に伝達された
  • コースは良く組織立っており、スムースに運営された
学習のための各種リソース
  • 図書館の各種リソースは自分のニーズに十分であった
  • 必要な時に、総合的なITリソースにアクセスできた
  • 必要な時に、専門的な機器、施設および部屋にアクセスできた
  • コースは自分自身の考えを、自信を持って表現するのに役立った
  • 自分のコミュニケーション・スキルが改善した
  • コースのおかげで、経験したことがない諸問題への取り組みに自信がついた
全般的な満足度
  • 全般的に、コースの質に満足している
  • あなたの大学の学生ユニオンが提供しているサポートや諸活動を含むすべてのサービスを考えた場合、以下の質問にどれくらい同意できるか? 自分の大学にある学生ユニオンに満足している
NHSが助成する学科の学生への質問
  • 現場実習に先立ち、十分な準備をするための情報を得ることができた
  • 自分のコースに適した現場実習を割り当てられた
  • 現場実習中、適切な監督や指導があった
  • 要求される訓練の成果や適性に合致するための機会を与えられた
  • 臨床チームの一員として、実習期間中の自分の貢献が評価された
  • 訓練スパーバイザーは、自分の実習がコースのより広範囲な要求にどのように関連しているのかを理解していた

 

【3. Key Information Sets 】

   Key Information Sets(KIS)は、高等教育機関への進学希望者が志望校を選択する際に役立てるため、全国の大学のフルタイムおよびパートタイムの授業コースの情報が大学別に比較できるようにしたデータである。
   全国の大学は、毎年10月末までにこれらのKIS情報の最新版を「Unistats」ウェブサイトにアップすることが義務付けられている。
   KISには入学希望者が有益であるとした、学生満足度、卒業生の進路、学習・授業活動、評価方法、授業料、奨学金や生活補助金、寄宿舎や民間の貸家、取得できる資格などが含まれる。

【Key Information Sets】

各大学が公開を義務付けられている項目 情報源 情報レベル
勉学
「全国学生満足度調査(NSS)」による以下の質問への結果:

  • 授業における教員の説明の仕方が良い
  • 教員は授業内容を興味深くする努力をしている
  • 全般的に、コースの質に対して満足している
  • 学んでいる科目に対して十分な助言と支援を受けた
  • レポートへのフィードバックが迅速である
  • レポートへのフィードバックが理解できなかった点を明白にした
  • 図書館の各種リソースは自分のニーズに対して十分であった
  • 必要な時に、総合的なITリソースにアクセスできた
HEFCEがNSS結果より抽出 授業コース・レベル又は総合
  • 学習及び授業活動に使用された時間の割合(授業の年次・ステージ別)
  • 方法および年次・ステージ別の累積的評価の割合
  • 授業コースを認定する専門的、法定および監督機関。またその認定の種類の詳細
各高等教育機関がHEFCEに提出 授業コース・レベル
費用と経済的支援
  • 高等教育機関が所有又はスポンサーする宿舎:平均的年間費用、年間家賃の上位25%及び下位25%の値、利用できると推定される部屋数
  • 民間経営の宿舎:平均的年間費用、年間家賃の上位25%及び下位25%の値
各高等教育機関がHEFCEに提供 高等教育機関レベル
  • 高等教育機関からの学生への経済的支援:授業料免除、家庭の年間収入が低い学生への経済的支援、家庭の年間収入額に無関係な経済的支援、スカラーシップ(National Scholarship Programme等)
UCAS(*)経由でないコースの場合は、高等教育機関がHEFCEに情報提供。その他はUCAS経由* UCAS:英国では大学への入学希望申請書は通常UCAS(The Universities and Colleges Admissions Service)を通じて行われている。UCASでは、毎年フルタイムの学士課程への入学希望申請書を処理し、各高等教育機関との仲立ちをしている。 授業コース・レベル
  • 平均年間授業料
  • イングランド、スコットランド、ウェールズ及び北アイルランド等、英国学生の現在定住地域ごと
同上 同上
卒業生の就職と給与水準
  • 卒業6か月後の状況
  • 就職、勉学、就職しながらのパートタイム勉学、失業中等
  • 就職6か月後に管理職または専門職に就いた卒業生の割合
  • フルタイムにて就職している卒業生の給与水準:高等教育機関を卒業後、6か月経った時点での卒業学科別給与の上位25%、平均、下位25%の値卒業後6か月経った時点での、全高等教育機関を通じた学科別、地域調整後の給与の上位25%、平均、下位25%の値卒業後40か月経った時点での、全高等教育機関を通じた学科別、地域調整後の給与の上位25%、平均、下位25%の値
HEFCEが「Destination of Leavers from Higher Education(DLHE)」から抽出。40か月後数値は「Longitudinal DLHE Survey」から抽出 授業コース・レベル又は総合
学生ユニオン
  • 「全国学生満足度調査(NSS)」における質問及び追加質問への回答
HEFCEがNSS結果より抽出 高等教育機関レベル

 

【4. 筆者コメント 】

   英国の大学進学希望者が入学志望校を選定する際にどのような情報を欲しているのか、またHEFCEがどのような情報を重視しているのかを紹介するために、「全国学生満足度調査」の全質問事項と「Key Information Sets」の全項目を掲載してみた。
   英国政府関連の資料を読んでいると、学生を「customer」と呼んでいる資料によくぶつかる。2012年秋のタームからは年間授業料が従来の最大3,200ポンド近くから一気に最大9,000ポンドに大幅に上昇しており、それだけの価値があるのか、学生や学生の親たちの大学に対する目も従来以上に厳しくなってきている。
   それらに対処するためにも、大学進学希望者に対する大学の「サービス」の一環としても、各種の情報公開がHEFCEの指導の下に進められている。
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