英国の高等教育・科学担当大臣が昨年秋、英国大学協会内に設置されているUK Higher Education Unitに委託した、英国の大学生の海外留学や海外就職への機会と障害に関する調査結果が、「Recommendations to support UK Outward Student Mobility」 と題する報告書にまとめられ、5月初めにその内容が公開された。英国も日本と同様に、学生の海外留学がほかの先進国に比べてあまり活発ではなく、世界を相手に活躍できる国際人を育成するためにテコ入れの必要に迫られている。その意味で、この英国の報告書の提案なども何かの参考になると考え、17ページの報告書の中から、提言を中心に、抜粋のみを紹介する。 |
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【4. 柔軟なカリキュラム 】
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英国の学生の海外留学や海外実習を増やすには、課程や活動の認定のために、カリキュラムにより大きな柔軟性を持たせる必要がある。すでに大学によってはその対策を取っている所があるが、特に分野やSTEM(科学・技術・工学・数学)分野では、英国国内にて全モジュールを終了する必要があったり、海外に適切な施設がないというような理由によって海外留学の機会が制限されることもある。これらに対処するために、学位認証機関や専門資格機関との緊密なコンサルテーションが必要であろう。 |
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【5. データの収集 】
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学生のモビリティーに関する全国レベルでの包括的な情報の収集が必要である。また、モビリティーの定義と必要なデータへの合意も必要となる。データ収集に関わる手間は負担にはなるが、広範囲の学生モビリティーに関する情報の欠如は、効果的な戦略、支援および成果の測定への妨げになる。 |
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【8. その他の方法による国際経験 】
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大学および学生モビリティーに関する国家戦略は、例えば、英国内においても得られ海外についての見識を含め、海外経験が得られる色々な形態が存在することを認識する必要がある。企業は、国際的な考え方ができる人材を求めているのであって、どのようにして国際感覚を身に着けたかにはあまり関心を置いていない。 |
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企業は国際的な考え方を持ち、多様な文化があることを認識し、さまざまな状況で活動でき、かつコミュニケートできる学生を求めている。この文脈において、さまざまなコミュニティーとの連携を通じて、英国の多文化社会が提供する機会を活用することもできよう。このような英国内にて得られる経験は、いろいろな事情で海外に行くことができない学生に国際的機会を提供することにもなる。 |
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【9. 補足資料:学生のモビリティーに対する動機と障害 】
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視点 |
動機 |
障害 |
大学 |
・学生の海外経験は世界大学ランキングに貢献
・外国人スタッフの採用
・大学の評判と国際的プロファイルが向上
・海外の大学との共同研究や共同コースの開発
・トップクラスの海外の大学との連携の可能性
・大学の評判が学生の就職を支援
・EUからの助成の可能性 |
・海外留学に対する低い期待
・カリキュラムの柔軟性の欠如
・医療やSTEM学科には、海外留学ができない場合がある
・英国と比べた海外での教育の質への認識の問題
・大学にとっての利益への認識および支援体制の問題
・適切な海外パートナーを見つける困難さ
・実習制度のメカニズムが困難
・国際部の役割に関する混乱が生じる可能性 |
学生 |
・雇用の可能性
・自己開発
・外国語に修得
・多文化への認識
・エラスムス制度による留学生へのEU助成金 |
・長期間になることによる費用の増加
・生活費の増加
・費用効果への感じ方
・限定的助成
・単位の認証の欠如
・留学生としての経験や海外にいるときの支援
・外国語のスキル |
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