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街を歩くと、住宅の屋根にたくさんの太陽電池が取り付けられているのを見かけることがある。また、人工衛星やソーラーカーなどの電源として使用されていることもよく知られている。最近では、携帯電話に搭載されているものまである。
では、太陽電池というと、どのようなイメージを持っているだろうか。何と言っても、太陽光を原材料にしているので、燃料が不要で廃棄物も出ない。つまり、環境にやさしい。消費地生産型の電力のため、システムさえあれば災害時でも使用できる。住宅に設置している場合は、電気代が節約でき、残った電気は買い取ってもらうことができるため、自宅への導入を検討している人も増えてきているのではないだろうか。そうなると、価格、変換効率、耐久性、寿命、コストパフォーマンス、減価償却はできるのかなど、さまざまな疑問が生じてくる。
本書は、このような疑問に対して、一つ一つ丁寧に説明している。一つの疑問に対して、見開き2ページのため、説明も非常に簡潔で、全体の3分の1を占める図やグラフも平易だ。一体太陽電池とは何なのか。その長所や短所を理解していくうちに、ふと「あれ、そもそも電気ってなんだっけ」と思いとどまってしまう。そこで、第3章に「電気ってなんだろう?」という項目があらためて来るのは、なんとも心憎い。
シリコン太陽電池の原料は、シリコン(ケイ素)だ。シリコンは、砂や岩石の原料として土中にたくさんあるため、比較的安価であり無尽蔵だ。しかし、太陽電池には高純度シリコンが必要とされ、莫大(ばくだい)な電力と設備の整った工場が必要になり、どうしても高価になってしまう。そのため、シリコンを使わない化合物太陽電池や有機太陽電池などが開発されている。まだまだ原料が高かったり、変換効率が低かったりと問題点があるが、その進歩はめざましい。本書では、これらの太陽電池についても、丁寧に説明されている。
そして、最後に経済的価値について説明している。太陽電池が高価なのは、本体のほか、組み立てや設置のコストも高価なためと指摘している。また、これまで消費地生産型の小規模発電を中心に考えられてきたが、今では、大規模発電施設の開設まで拡大しているという。2008年には、小規模火力発電所に匹敵する施設ができた。また、これまで利用されていなかったコンビナート工場の屋根を使うユニークなものまで建設中だ。さらに、変換効率を上げると、ゴビ砂漠の半分に太陽電池を敷き詰めれば、世界中の電力を賄うことができる試算まで出されているという。
このような壮大な話に、太陽から届けられる光エネルギーの大きさを再確認させられる。石油や石炭、天然ガス、ウランなどの天然資源は、いずれ可採埋蔵分が枯渇するといわれている。これらの天然資源に代わって、環境にやさしい太陽電池が、電気エネルギーをもたらすシステムになるだろうと期待させる一冊である。