レポート - 英国大学事情 -

2006年12月号「『2006年度大学ランキング(続報)』&『2年制の学士課程の試行』」

掲載日:2006年12月1日

英国在住30年以上のフリーランス・コンサルタント山田直氏が、新しい大学の生き方を求め、イノべーション創出、技術移転などに積極的に取り組む英国の大学と、大学を取り囲む英国社会の最新の動きをレポートします。(毎月初めに更新)

 

【 2006年度 大学ランキング(The Sunday Times紙) 】

2006年9月、恒例のThe Sunday Times紙による「Universities Guide」が発行された。「英国大学事情2006年第8号」にて紹介した大学ランキングへの追加資料として、その一部を紹介する。

【総合ランキング】
(かっこ内は2005年度)
1(1) Cambridge 11(10) Bath
2(2) Oxford 12(11) Nottingham
3(4) LSE 13(13) KCL
4(3) Imperial College 14(12) Edinburgh
5(5) UCL 15(18) Manchester
6(6) Warwick 16(17) Southampton
7(7) York 17(15) Loughborough
8(9) Durham 18(25) Exeter
9(8) Bristol 19(16) East Anglia
10(14) St Andrews 20(24) Sheffield


【学科別ランキング】
【欧州言語学】
1. Oxford
2. Cambridge
3. Bristol
4. UCL
5. Manchester
【機械工学】
1. Imperial
2. Cambridge
3. Bath
4. Bristol
4. Oxford
【歴史学】
1. Durham
2. Cambridge
3. Oxford
4. Bristol
5. KCL
【物理学】
1. Cambridge
2. Warwick
3. Imperial
3. Oxford
5. Durham
【農学】
1. Reading
2. Aberystwyth
3. Nottingham
4. Bangor
5. Newcastle
【スポーツ科学】
1. Loughborough
2. Bath
3. Birmingham
4. De Montfort
4. Uwic
【観光学】
1. Bournemouth
1. Surrey
3. Oxford Brookes
4. Manchester Metropolitan
4. West of England
 


ドロップアウトの比率(*1)
1 Oxford 1.6%
2 Cambridge 1.8%
3 Durham 3.3
4 Warwick 3.6
5 Nottingham 3.7
6 Bristol 4.1
6 LSE 4.1
8 Exeter 4.2
9 Bath 4.7
10 Imperial College 5.2
授業に対する評価(*2)
1 Cambridge 96.3%
2 Loughborough 94.7
3 York 93.8
4 LSE 87.5
5 Open 86.7
6 Oxford 85.7
7 Essex 84.6
8 Imperial College 81.8
9 UCL 77.4
10 KCL&Nottingham 75.0


研究(*3)
1 Cambridge 92.3%
2 LSE 89.7%
3 Oxford 89.11
4 Imperial College 83.4
5 Warwuck 80.4
6 York 79.1
7 UCL 77.8
8 Southampton 77.2
9 Lancaster 77.1
10 St Andrews 75.8
(資料:The Sunday Times League Table 2006)
学生満足度(*4)
1 Buckingham 82.4%
2 Open 79.6
3 StAndrews 77.3
4 Leicester 76.9
5 East Anglia 76.8
5 Loughborough 76.8
7 Aberystwyth 75.6
8 Hull 74.6
9 Birkbeck、London 74.3
10 College of St Mark &St John 74.2
(資料:National Student Survey 2006)


研究収入(*5)
(2003-04年度、単位:1,000ポンド)
1 Imperial 164,004
(約360億円(*6))
11 Birmingham 69,641
(約153億円)
2 Cambridge 162,504 12 Sheffield 66,086
3 Oxford 161,794 13 Nottingham 63,316
4 UCL 156,558 14 Bristol 59,995
5 Manchester 109,458 15 Cardiff 57,643
6 Edinburgh 95,840 16 Liverpool 56,335
7 KCL 94,667 17 Newcastle 53,106
8 Glasgow 77,224 18 Dundee 40,701
9 Southampton 72,674 19 Queen Mary 36,761
10 Leeds 71,437 20 Leicester 36,416

 

 

【 2年制の学士課程の試行 】

2006年9月の新学期より、従来の年間1,175ポンド(約26万円)の大学の一律授業料は、各大学の裁量により、年間3,000ポンド(約66万円)まで引き上げられることになった。当初は人気のある大学だけしか、最高限度の3,000ポンドまで授業料を上げることができないのではないかと見られていたが、90%近い大学が一気に最高限度の3,000ポンドまで引き上げたとの報道もある。

今回の授業料の大幅引き上げに伴い、経済的問題から大学進学をためらう学生も出てきている。また、学費を大幅に引き上げたため、定員の学生数を集めることができない大学も出てきており、成績優秀者には授業料のディスカウント等のインセンティブを提示して、学生の確保に努めている。

英国では、自分で学費と生活費を賄っている学生が多く存在する。そのため、学生ローン等からの借り入れにより、大学卒業時には、生活費を含め数百万円の負債を負う学生も多い。今回の授業料の大幅値上げに伴い、多くの学生は卒業後、仕事についてから授業料を分割で支払うことができる措置が採られたが、卒業時に負債を負うことには変わりはない。

このような負担を軽減するために、2006年9月より、英国では通常3年(*7)の学士課程を2年に圧縮して学士課程が終了できる「Fast Track」コースが、Staffordshire、Derby、Leeds Metropolitan、Northampton、The Medway Partnership in Kentの5つの大学にて試験的に導入されることになった。

スタッフォードシャー大学では、この2年コースに英語、哲学、地理学、法律、生産デザインの5科目を導入し、2007-08年度には科目数を増やすとしている。この2年コースの学生には夏季休暇は無く、7月から9月までは「第3学期」として、対面型ワークショップ、インターネットによる遠隔授業、チューターによる個別授業のコンビネーションによる複合型授業(blended-learning)が行われる予定である。

英国では、すでに職業に関連した科目のための「Foundation Degree」という、2年コースが数年前に導入されているが、正規の学士号「Full Honours Degree」ではないため、学士号取得にはもう1年の就学が必要となる。

高等教育担当大臣はBBCのインタビューに応え、「高等教育は異なる顧客のニーズを考慮しなければならない。従来の伝統的な学士課程は、学生の都合ではなく、大学関係者の都合による長期休暇によって中断されている。」とした。

BBCは、この試行的2年コースに対する批判的な意見も紹介した。

  • 保守党スポークスマン:「政府の大学生の数を増やすという目標のために、学士号が安売りされている。」
  • 自由民主党スポークスマン:「自由民主党は従来から、柔軟性のある授業を提唱してきたが、これは、学生の生活費を削減するための‘詰め込み授業’を意味するのではなく、‘大学にての経験’を通じて、多くのことを得られるようにすることが大事である。」
  • 教職員組合スポークスマン:「大学には、学生に学位を取得させ、社会に送り出すだけではなく、その他に多くの重要な存在意義がある。」
  • 学生ユニオン・スポークスマン: 「パートタイムで働く時間が無くなり、この2年コースは経済的負担の軽減にはならない可能性がある。」

 

【 筆者コメント 】

3-1. 2006年度 大学ランキング

筆者は、「英国大学事情2006年第号」においても英国の大学ランキングを紹介したが、今回は、学科別のランキング、学生満足度、授業容、研究等、より詳細な内容を補足的に紹介した。

学生満足度においては、通常のランキングとは大きく異なるランキングになっているのは興味深い。また学科別のランキングにおいても、オックスフォード、ケンブリッジやロンドン大学だけでなく、色々な大学がランキングの上位に名を連ねている。

各大学が特色を出しており、英国の大学においては「Centre of Excellence」が一極に集中していないことがうかがえる。研究費においても、17大学が研究助成金および研究契約料を合わせて、合計年間100億円以上の研究費を確保している。

3-2. 2年制の学士課程の試行

従来、英国では唯一の私立大学である、バッキンガム大学だけが2年間の学士課程コースを設けてきた。3ページに掲載した学生満足度調査では、バッキンガム大学はトップにランクされているのが注目される。

バッキンガム大学の学生のほとんどは外国からの留学生であり、現在の2年コースの授業料は2年間で総額26,000ポンドである。これは、現在の英国の大学における留学生向け授業料の平均が年間8,300ポンド(約180万円)、3年間で総額24,900ポンドと比較して、1年間の生活費の差を考慮すると決して高い金額ではないとも言える。このことも、学生満足度がトップになった一要因と思われる。

この試行的な取り組みには賛否両論あり、成功するかどうかは、あと数年経たないと不明ではある。しかしながら、学生のニーズを考慮した柔軟な取り組みには、一定の評価がなされるであろう。

ちなみに、英国の大学における留学生向けの授業料に関する、英国大学協会(UniversitiesUK)の2006年度アンケート調査結果を紹介する。筆者は「英国大学事情2006年第7号」にて、英国の大学における留学生の急増を報告したが、この背景には、以下のように、留学生向けの授業料は国内およびEUからの留学生に比べ、数倍高いという事情がある。また、このように国内に比べ数倍高い授業料であるにもかかわらず、海外から多数の留学生を引き付けることができるのは、「英語」という大きな利点のほかにも、英国の大学がもつ魅力があるのであろう。

【留学生向け・学士課程の授業料】
(単位:ポンド)

【留学生向け・大学院の授業料】
(単位:ポンド)

 

 

用語説明

  • *1 ドロップアウトの比率:学位を取得できなかった学生または、他の大学に移籍した学生の比率
  • *2 授業に対する評価:1995年の調査以来、各大学の授業において、最優秀(Excellent)と評価された学科の比率
  • *3 研究:各大学の研究において7段階の評価のうち最優秀と評価された学科の比率。高等教育助成会議による、最新の公的評価(RAE・2001)に基づく。
  • *4 学生満足度:公的助成機関のHEFCEによって毎年実施される、最終年次の学生への全国的な満足度に関するアンケート調査
  • *5 研究収入:研究助成金および研究契約料の合計
  • *6 約360億円:1ポンドを220円にて換算
  • *7 英国では通常3年:スコットランドでは4年
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