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コロナ重症者数が過去最多を更新し、医療現場がひっ迫 専門家組織「命助けられなくなる」と強い危機感

2020.11.26

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の深刻度を示す手掛かりとなる重症者数が過去最多を更新し、医療現場がひっ迫しつつある。厚生労働省に助言する専門家組織(脇田隆字座長)は24日会合を開き、「このままの状況が続けば、通常の医療で助けられる命が助けられなくなる」と強い危機感を示した。

 厚労省のまとめによると、人工呼吸器や集中治療室で治療を受けている重症者の数は23日発表で331人を数え、4月30日の328人を超えて過去最多を更新。24日はさらに増えて345人になった。重症者数は11月に入って2倍以上に増加し、今後増減はあっても新規感染者数の増加に従って最多を更新する可能性が高い。

新型コロナウイルス感染症の増減を示すグラフ。24日には345人になった(厚生労働省提供)
新型コロナウイルス感染症の増減を示すグラフ。24日には345人になった(厚生労働省提供)

 専門家組織は24日の会合で、今のままでは医療提供体制や保健所の業務に重大な影響を生じると指摘した分析結果をまとめた。この中で同組織は「病床や人員の増加も簡単には見込めない中で、各地の新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難になり始めている」と医療現場の受け入れ体制がひっ迫しつつあると判断した。

 現在の感染状況が続いた場合は通常は助けられる命も助けられなくなる、との厳しい認識を示した上で「Go Toトラベル」の見直しや営業時間の短縮、地域間移動の制限といった対策を政府や自治体が速やかに実行するよう求めている。

 専門家組織によると、1人の感染者が平均何人にうつすかを示す指標「実効再生産数」は大阪、京都、兵庫の3府県で2を超え、北海道、東京都、愛知県などで1を超える水準が続いている。

 医療現場の状況を示す受け入れ確保病床数に占める重症者入院者数の割合は、11月18日時点で全国平均では約14%ながら、東京都で見ると4日の約26%が18日には約37%になっている。その後その数値は上がっているとみられる。受け入れ確保病床数に占める入院者数の割合は18日時点で既に大阪府で40%を超え、北海道、埼玉、東京、愛知、沖縄の各都道県も30%を超えている。

 専門家組織はそれぞれの地域の状況を分析した。北海道については「札幌市近郊を含め、道内全体にも感染が拡大。札幌市を中心に病床がひっ迫しており、旭川市でも院内感染が発生し、入院調整が困難をきたす例が発生するなど厳しい状況となりつつある」と評価。首都圏については「(東京都を含めた)首都圏全体でも、埼玉、神奈川、千葉の各県でも感染が拡大しており、医療機関、福祉施設、接待を伴う飲食店などでクラスターが発生し、医療体制が厳しい状況だ」としている。

 こうした深刻な状況になった要因について同組織はまず「基本的な感染予防対策がしっかり行われていないこと」を挙げたほか、人の移動の増加や気温の低下による影響などを指摘している。

新型コロナウイルスの電子顕微鏡撮影画像(NIAID提供)
新型コロナウイルスの電子顕微鏡撮影画像(NIAID提供)

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