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第5期科学技術基本計画で女性研究者支援は?

掲載日:2015年8月25日

中期的な視点に立ち、10年程度を見通しつつ5年間の科学技術イノベーション政策の姿を示す。このように説明されている科学技術基本計画の検討作業が、年末の策定に向けて総合科学技術・イノベーション会議で進められている。2016年度からの5年間の姿を示す第5期科学技術基本計画に女性研究者支援がどれだけ盛り込まれるかについて、女性研究者から心配する声が聞かれる。

総合科学技術・イノベーション会議は、科学技術基本計画を補完する形で、一昨年から毎年、科学技術イノベーション総合戦略を策定している。今年6月19日に閣議決定された「科学技術イノベーション総合戦略2015」に、女性研究者支援はどのように盛り込まれたか。「女性の活躍促進は、男女共同参画の観点のみならず、多様な視点や発想を取り入れ、研究活動を活性化し、創造力を発揮する観点からも、科学技術イノベーション政策上、極めて重要である」と、重点的取り組みの中に記述されている。

「科学技術イノベーションへの参入を目指す女性のロールモデルとなるような女性リーダーの登用を促進するとともに、ワーク・ライフ・バランスの実現のための支援および環境整備を行い、女性が継続的に知的プロフェッショナルとして活躍できる環境整備に取り組む」ことも、具体的に設定する取り組みとして掲げられた。

女性リーダーの育成もワーク・ライフ・バランスの実現のための支援および環境整備も、89の学協会が加盟する「男女共同参画学協会連絡会」が、昨年4月政府に提出した「女性研究者・技術者がポテンシャルを最大限に発揮するために:課題と要望」の中に盛り込まれている。この中で具体的に求められていたのが「女性リーダー・イノベーション拠点モデル事業の創設」と「同居支援のための新たな制度」である。

女性研究者に研究力とマネジメント力を発揮する機会を与えるためには新たな競争的資金プログラムが必要。さらに結婚、子育て、介護といったライフイベントと研究生活を両立させるには、育児休業・介護休業中の研究維持を可能にする研究費の運用に加え、研究者のパートナーが同居不能な遠方の地域の新職場に移る際、パートナーと共に転居し同じ地域で研究を続けられる「同居支援」のための新規プログラムが必要、との理由からだ。新たな「同居支援」の形として、人件費のみ、あるいは人件費と研究費の支援付きでパートナーと同じか、同居可能な地域の研究機関で研究を続けられるような制度なども提案していた。

「科学技術イノベーション総合戦略2015」には、男女共同参画学協会連絡会の要望の基本的方向はともかく盛り込まれた、といえるだろう。ところが5月に公表された総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会の「第5期科学技術基本計画に向けた中間取りまとめ」には、新たな女性研究者支援策や数値目標が全く書き込まれていなかったことに、男女共同参画学協会連絡会の提言委員会は危機感を強めているという。

確かに中間取りまとめには、新しい女性研究者支援策は見当たらない。「女性研究者については、これまでも組織的な取り組みなどが進められてきたが、諸外国と比較すると女性研究者の割合はいまだ低水準にとどまっていることから、根源となる課題の解決への調査を深化させ、教育・研究の段階・特性に応じた対応の検討等により、活躍の機会を一層拡大していくことが求められる」という記述が目につくくらいだ。

この点、日本学術会議の方が女性研究者支援策の不十分さに対する危機意識は相当大きいように見える。6日に同会議の科学者委員会男女共同参画分科会(委員長・井野瀬久美惠甲南大学文学部教授)がまとめた提言「科学者コミュニティにおける女性の参画を拡大する方策」は、夫婦の研究者に対する支援策だけを見てもまだ世界の潮流から見ると遅れている、という考えに立つ。結婚後も旧姓を選択できる権利や事実婚に加え、同姓婚も認める法制度の改定などに踏み込まないと、女性研究者の活躍の場は狭められたままだし、実際にビザの給付や大学宿舎貸与条件がこのような家族の多様化に対応していないため、 研究の国際交流に多大な支障・摩擦が生じている、と指摘している。

日本では、夫婦別姓を認める法改正ですらまだまだ抵抗する人々が多いとみられる。総合科学技術・イノベーション会議が、年末に策定する「第5期科学技術基本計画」に果たしてどこまで踏み込んだ女性リーダー育成、ワーク・ライフ・バランスの実現策を打ち出せるだろうか。そもそも日本学術会議の積極的な提言の中には、次のような気になる現実も紹介されている。

「何らかの男女共同参画施策を行っている学協会は 2 割前後と少ない。特に文系学協会では男女共同参画をうたった、あるいはそれと関連する組織的努力はほとんどなされていない」

まずは、日本学術会議が今回の提言にとどまらず、研究者たちの合意を作り上げる努力を重ね、学協会自らが率先して女性研究者支援に向けて行動するよう働きかけることが求められている、ということだろうか。

(小岩井忠道)
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