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国立女性教育会館は変われるか

2012.08.29

 「国立女性教育会館の在り方に関する検討会」が28日、館の目的を「女性教育」から「男女共同参画」に変更することなどを求めた報告書を公表した。

 独立行政法人「国立女性教育会館」は、2009年の行政刷新会議の事業仕分け作業で、蓮舫参院議員と神田道子同会館理事長(当時)とのやりとりが話題になった。今回の報告書は、「機能・在り方をゼロベースで見直す」ことで館の存続を認めた形になっているが、他方、現在の館の在り方にさまざまな問題点があることも、あらためて明らかにしている。

 3年前の事業仕分けの議論では、宿泊施設の稼働率が44%しかなく、このうち研修目的外の一般利用者が55%いることが明らかにされた。さらに、実質は一般利用者なのに、わずか30分のミニ講座を受けただけで「研修目的」とみなしている運用実態も問題にされた。ミニ講座を受けると、一般利用者の宿泊料金(3,000円)より安い2,400円で宿泊できる。

 今回、公表された検討会報告書は、「目的が法律上『女性教育』に限定されているため、男女共同参画社会実現に必要な業務、特に男性に対する働きかけを本格的に実施することが困難である」ことを、課題の1番目に挙げている。一方、「利用者は、男性38%、50歳以上約半数、3回以上の利用者9割、関東地域9割と、著しい偏りがあり、国民の幅広い層への対応ができていない」というのも課題の中に見られる。

 これは、女性教育の振興とは関係なく、環境がよく、スポーツ施設なども備えた館に宿泊するのが目的の“リピーター”が相当多い、ということを意味しているのだろうか。

 報告書は「女性の地位向上のため『女性教育の振興』を目指す機関から、『男女共同参画社会の実現』を目指して教育・学習支援を担う機関に発展させる」「所有施設での自前の研修中心の機関から、開発した研修プログラムなどを各機関に提供し、自主的な教育・研修活動を支援する機関に転換する」など、館の機能・運営を抜本的に見直すことを提言している。

 さらに、事業仕分けで具体的に指摘された宿泊施設の利用実態に関しては、「宿泊施設などの『ハード』の管理運営を全面的に民間に分離・委託し、効率的運営とサービス向上を図りつつ、資源を『ソフト』に集中できる構造に転換する」ことを求めた。

 果たして、これで国立女性教育会館は変身できるだろうか。

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