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経団連が政府のエネルギー・環境選択肢批判

2012.07.30

 日本経済団体連合会は27日、政府が示した「エネルギー・環境に関する選択肢」について、3シナリオとも「実現可能性や経済に及ぼす影響など問題が多い」として見直しを求める意見を公表した。

 政府が示し、現在、国民の意見を聴く作業を進めている「エネルギー・環境に関する選択肢」は、2030年までに電力に占める原子力発電の比率が「ゼロ」、「15%」、「20-25%」という3つのケースを設定し、それぞれ温暖化対策など国際的な責務との両立を図るシナリオを提示している。省エネ策の拡大、再生エネルギーの導入促進により、原子力、化石燃料の依存度を下げるとともに、総発電量も現状より1割削減することを目指している。

 経団連は、まず3つの選択肢とも「エネルギー需要の予測の前提となる経済成長率の想定を2010年代1.1%、20年代0.8%としており、政府が示した成長戦略の制約要因となる恐れがある」と批判している。

 さらに、「国内総生産(GDP)が伸びても電力需要は減少するという、過去の実績とは逆の想定になっている」ことや「再生可能エネルギー実現可能性の検証が不十分で裏打ちする対策も不透明であるほか、導入拡大に伴うバックアップ電源の規模・コストが明示されていない」と、実現可能性に強い疑問を呈している。

 参考資料にも複数の試算を紹介して、3つの選択肢のいずれをとっても、国民の負担増、産業の国際競争力低下は免れない、と主張している。

 経団連は3つの選択肢の1つとして示された「20-25%」という原発の比率自体には賛意を示している。福島第一原発事故が起きる前、原子力発電の全電力に占める比率は26%だった。政府は、原子力発電所の寿命を40年(例外として1回最大20年間の延長を認める)という規制方針を明らかにしている。この方針が実行されれば「20-25%」という数値は、原子力発電所の再稼働にとどまらず新しく原発を造ることを意味しており、現在、政府が掲げる脱原発路線と相容れない選択肢とも言える。

 政府の成長戦略は、福島第一原発事故が起きる前の2010年に決められた。この成長戦略も引き合いに原発を維持すべきだとする経団連の主張は、どこまで国民の支持を得られるだろうか。

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