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国立大学の研究活動は低下しているか

掲載日:2010年12月24日

科学技術政策研究所が、論文数の分析から日本の研究動向を見た調査報告「科学研究のベンチマーキング2010-論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況」を公表した。国際文献情報企業、トムソン・ロイター社の「Web of Science」のデータを基に、科学技術政策研究所があらためて集計した。

論文総数とインパクトの高い論文数(Top10%論文数)とも日本は増えているが、1990年代に比べると2000年代の伸び率がゆるやかになっているのが目を引く。米国、英国、ドイツ、フランスに伸び率で及ばず、中国をはじめとする新興国の台頭により、特に論文数シェア、Top10%論文数シェアがともに2000年代になり低下しているのも気になるところだ。

論文数シェアはともかくとして、Top10%論文数のシェアが低下している理由についてはどのように考えられるのだろうか。1997-99年にはTop10%論文の数は日本全体で年平均4,058本あった。このうち国立大学から出た論文は2,254本で国内総論文に占めるシェアは55.5%、次いで私立大学が459本で11.3%、企業416本で10.3%、独立行政法人315本で7.8%となっている。

2005-07年の年平均はどうなったか。国立大学から出た総論分数は2,216本(国内シェア55.1%)に減り、企業も224本(5.8%)と半減に近い減少となった。私立大学もやや減ったのに代わって、独立行政法人が538本(13.4%)と本数もシェアも大きく伸ばしている。

結局、「1番大きなシェアを占めている国立大学の失速が日本全体のTop10%論文数の伸び悩みを招いている」というのが報告の結論だ。国立大学の論文数は97-99年の年平均28,226本から05-07年には29,331本に増えているから、論文の質が落ちている、と言われてもしようがないようにもみえる。

ただし、こうした論文データだけでみた大学に対する評価と全く別の見方もある。北澤宏一 氏・科学技術振興機構理事長は、最近いろいろな会合で、日本の大学の研究レベルは上がっているという主張を続けている。特許取得件数、大学発ベンチャー企業の起業件数などさまざまな指標を見ても明らかに大学の研究実績は伸びており、トムソン・ロイターのデータによっても、最も論文を引用された数が多い研究者として毎年のように日本の大学の研究者の名前が最上位に挙がっているような状況は、かつては見られなかったこと、というデータを根拠にしている。

さらに今後の状況を見ないことにはこの論争は決着しない、ということだろうか。

【この記事へ読者コメント】

 
論文数が減るのは良い傾向
投稿者:山形方人 2010年12月29日掲載

論文数という「数」の評価は、実績を見せるのには明解です。しかし、これは官僚好みというか、報告書の見た目を良くしたり、報告書を厚くしたりする見かけ上の実績です。

質の高い研究を目指せば、小さな研究内容を別々の複数の論文にするより、まとめて質の高い一本の論文になるわけです。ですから、質と論文数は逆比例の関係になるはずです。

一方、学校教育法改正に伴う講座制等の制度的な変化により、より独立したグループが増え、そのため論文著者に粉飾的になるという傾向が減少してきていることもあると思います。つまり、以前は講座制の助手が、その上司である講座の教授の名前を論文に入れていたのが、その必要性がなくなった。つまり、日本発の論文で頻繁にみられた著者数の多い論文が少なくなり、その結果、研究への関与が実質的な論文が増えて、粉飾的な業績が少なくなったとみることができます。これは、例えば、「Honorary or guest authorship is not acceptable. 」とされる欧米の「著者となるための基準」に近づいたとみることができるのではないでしょうか。
http://hms.harvard.edu/public/coi/policy/authorship.html

もちろん、独立法人化に伴う「雑用」の増加により、研究時間が減少したという理由もあると思います。しかし、論文の数というものが減少することは、粉飾業績の排除、研究の質の上昇という点から本来良い傾向とみるべきではないでしょうか。

 
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