レビュー

化学物質に対する周知度の差は

2010.08.20

 内閣府が「身近にある化学物質に関する世論調査」の結果を公表した。

 「化学物質」という言葉についての印象については「危ないもの」が69.7%に対し、「現在の生活になくてはならないもの」は25.5%となっている。

 ところでこの調査の最初の質問は「化学物質」という言葉の周知度を見たものだ。「よく聞く」が57.5%で、「あまり聞かない」が42.5%である。この数字をどう見るべきなのだろうか。「あまり聞かない」と答えた人たちが「化学物質とは何か実はよく分からない」人たちだったとすると、こちらの方こそ心配ではないだろうか。

 そうした懸念が取り越し苦労ではないかもしれない、と思わせる数字もある。住んでいる地域や男女による回答の差はほとんどないのに対し、年齢による差は大きな違いがあるのだ。60歳代で65%、70歳以上で60.3%が化学物質という言葉を「よく聞く」と答えているのに対し、20-29歳は際だって低く「よく聞く」は36.8%しかいない。「よく聞かない」が63.2%とはるかに多くなっている。30-39歳も「よく聞く」(50.4%)と「よく聞かない」(49.6%)がほとんど同じ。若い層ほど「化学物質」という言葉を「よく聞かない」人が多いということだ。

 ちなみに「化学物質」という言葉についての印象については、20-29歳は「危ないもの」が62.6%、「現在の生活になくてはならないもの」が25.7%で、それ以上の年齢層を加えた平均値である69.7%、25.5%とそれほど乖離(かいり)は見られない。

 ゆとり教育の是非が大きな問題となり、小学校・中学校の新学習指導要領が2008年3月に告示された。小学校は2011年度、中学校は2012年度から完全実施となり、授業時間の削減が続いていた小・中学校の理科と数学の授業時間増が図られる。そもそも理科の授業時間が減り出したのはいつからか。小学5、6年の理科の授業時間削減が始まったのが1980年度、中学1、2年で1981年度のことだ。1992年度には小学1、2年生の理科がなくなり、同じく社会科もなくなり、代わりに生活科という科目が新設された。生活科を履修した、つまり小学1、2年で理科がなかった最初の人々が、今年度に25-26歳になる。それ以前の1980年度と81年度に初めて小学5、6年と中学1、2年で理科の授業時間削減を経験した人たちが、今年度に41-43歳になる。

 「化学物質という言葉をよく聞かない」人たちが、20-29歳で急に増え、30-39歳も40代、50代、60代、70歳以上の各年齢層に比べると7-14ポイント増になっていることと、小・中学時代の理科の授業時間削減は関係ないと言えるだろうか。

 理科や数学の授業時間が増える新学習指導要領でも、小学1、2年生の生活科はそのままになっている。

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