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日中大学フェア&フォーラムが明らかにしたこと

掲載日:2010年2月26日

日本と中国の92に上る大学が参加した「変貌する日中の大学-グローバル大競争・連携時代を迎えて-」と題する日中大学フェア&フォーラム(1月29、30日東京で開催)は、フォーラムに千人、フェアに6千人を超える参加者を集め、盛況だった。

中国側の反応もよく、2月1日の人民網日本語版は「中日双方の大学に、全面的な交流のプラットフォームを提供した」と高い評価を与えている。

さらに「日本の大学と海外の大学が結んだ提携関係のうち、中国の大学との提携数は06年に米国を抜いてトップとなった。一方、中国の大学と海外の大学が結んだ提携のうち、日本の大学との提携数は2位となっている。中日両国は、一衣帯水という地理的メリット、およびアジアにおける経済的実力と研究条件の良さというメリットを活かし、中日大学間の協力をさらに推し進め、さらなる利益とメリットの発揮を促進していく」と協力を歓迎している。

日本の科学技術政策にかかわる人々の間では、日本の科学技術水準維持のためには、中国との協力は不可避という声が高まりつつある(有馬朗人 氏・科学技術振興財団会長、吉川弘之 氏・研究開発戦略センター長、藤嶋昭 氏・中国総合研究センター長、白石隆 氏・総合科学技術会議 議員林幸秀 氏・宇宙航空研究開発機構 副理事長有本建男 氏・科学技術振興機構 社会技術研究開発センター長など)。これらの声は、人口減などの影響で研究者の層も薄くなると予想される日本と比較し、中国の研究人材の豊富さが早晩、決定的な差になって現れる、という見通しに立っている。

同時に研究者の中には、中国を含めアジア諸国から見たら日本はノーベル賞学者を輩出しているうらやましい存在だ、という声もある(佐藤文隆 氏・甲南大学 教授など)。アジア諸国との研究者交流が必要という考えでは一致するが、日本自身の評価について科学技術政策担当者と一部の研究者には違いがあるようにも見える。

どちらか一方が正しいということでは、恐らくないのだろう。基調講演を行った物理学者の楊福家 氏・英ノッティンガム大学長は、日本の学問の伝統を評価する一方で、中国でリベラルアーツ、基礎教育を重視し、優秀な人材を育てる大学改革が進んでいることを強調していた。日中両国だけでなく欧米の研究の歴史にも詳しい楊氏に科学技術振興機構 中国総合研究センターの米山春子フェローがインタビューした記事が、Science Portal Chinaに載っている。

その中の以下のような記述については、日本にも当てはまると感じる人もいるのではないだろうか。

「基礎教育を改革しようとするなら、中国の大学入試制度をまず改革しなければならず、かつ基礎教育に携わるハイレベルの教師陣を養成する必要がある。最近、中国のみならず、日本の大学も基礎教育への重視度がまちまちであり、薄まっている大学もある。学生の質が下がっていることをよく耳にするが、これは基礎教育の問題だと思う。基礎教育は人文科学、自然科学、社会科学のみではなく、個人の人格に結びついた知識やこれに関連した学問 や芸術、および精神修養などの教育、文化的諸活動を含める教養の問題でもある。中国や日本の一部の大学には、グローバル大競争の情報社会において、学問が細分化され、基礎教育はあまり意味がなくなっているのではないかという考えもある。わたくしはそうと思わない。基礎教育は生徒・学生が自分に最も適した道を歩めるようにする助けになる。よい学生を育成するには、基礎教育から取り組まなければならない。体制と世論の面から基礎教育者を奨励し、尊敬を受けられるようにすべきだ。基礎教育、そして教育を強化してこそ、中華民族の復興は可能となる。われわれの時代が巨人を生み出す時代となることを心から望んでいる」

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