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高速料金上限1,000円の景気対策効果

2009.10.05

 財団法人運輸調査局が、5人の大学教授・准教授から成る「高速道路料金引き下げに関する研究会」による報告を公表した。4月1日から回答日(8月7-13日)までの土、日、祝日に遠出した人にウェブアンケートに答えてもらったデータ(28,791サンプル)と、7月28日-9月15日間に公共交通、物流関連、観光などの事業者、業界団体27社、6団体、44法人と都道府県観光担当部局(回答29都道府県)に質問票を郵送し、回答を得たデータをもとに、流動量と二酸化炭素(CO2)排出量舳の影響を試算している。

 報告書によると、高速道路料金「土、日、祝日上限1,000円」施策を年間通して実施した場合、年204万トンのCO2が排出増となる。この量は、日本の運輸部門が年間に排出するCO2量の0.82%に相当するとしている。

 高速道路の自家用乗用車利用者数は36.0%増えたと試算され、このうち鉄道利用から替えた人が2.2%、バスから0.4%、航空機からは0.3%、いつもの一般道路から高速道路利用に替えた、という人は8.4%となっている。これら振り替え組を除く新規誘発率は24.5%、つまり4人に一人が「土、日、祝日上限1,000円」施策による高速道路利用者の“純増”分という結果だった。

 さて、CO2排出増の見返りとなるメリットはどうだったのか。「景気刺激策としては一定の効果があった」としているものの、「全国各地の観光地がその恩恵を享受したわけではなく、地域的に偏りが見られる」「観光客が増加した場所も多くは日帰りであり、宿泊消費には必ずしも結びついていない。また、客単価もあまり高くない」と、必ずしも高い評価は与えていないように読める。

 「一定の効果があった」とする根拠としては、ゴールデンウイーク中に高速道路ETCを利用した人の一人あたり消費金額が11,663円で、この施策がなかったとした場合に比べると、宿泊施設、商業施設、観光施設、サービスエリア・パーキングエリア、その他の場所でいずれも消費金額が上回ったという数字を挙げている。ガソリン代やレンタカー代も当然増えたので、施策がなかった場合の消費金額試算値9,949円に比べて、一人あたり1,714円多くのお金を使ってくれた、というわけだ。

 11,663円と9,949円の違い。これが「相当の」とは言わず、「一定の」効果という評価になった理由と思われるが、ひとつ気になる点もある。消費金額には道路料金が含まれていることだ。当然の話だが、料金引き下げで道路料金は一人あたり1,028円の支出で収まっており、施策がなかった場合の1,781円より753円少なくなっている。景気対策(高速料金引き下げ)の効果を見る数字としては、報告書が示した1,714円ではなく、この753円も加えた額、2,467円が一人あたりの実質的な消費金額増という比較法はありえないのだろうか。

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