レビュー

米次期エネルギー長官のエネルギー政策

2009.01.15

 オバマ次期米大統領からエネルギー長官に指名されたスティーブン・チュー 氏に対する上院エネルギー・天然資源委員会による承認のための公聴会が13日開かれた。

 ニューヨーク・タイムズ電子版によると、チュー 氏は、省エネルギーの重要さを強調し、原子力発電所の建設は必要と答えるなど脱石油と地球温暖化に取り組む姿勢を示し、委員たちの支持を得たようだ。

 バイオ燃料についての質問に対して、これまでローレンス・バークレー国立研究所の所長を務めていたチュー 氏は「植物を糖に分解する研究を監督していた。糖をガソリン、ディーゼル油、ジェット燃料などの代替物に変える遺伝子組み換えバクテリアが開発された」と答え、委員たちを満足させた。

 米国では30年の空白を経て、原子力発電所を新設する動きが進んでいるが、チュー 氏は「少なくとも数基の新設は必要」との考えを明らかにした。石炭火力発電所の新設に対する質問に対しても「よりよい手段を見つけるまで数基は」と答えた。 氏は、これまで地球環境保全の観点から石炭に否定的な考えを明らかにしており、選挙区に石炭産業を抱える議員が多い米議会での証言が注目されていた。

 また、連邦政府が進めている技術開発のうち、高すぎるか安全性が確認されていないためまだ実用の域に達していないものとして、発電所からの二酸化炭素(CO2)の分離、使用済み核燃料の再処理、セルロースからのエタノール生産を挙げた。

 チュー 氏は、中国系米国人物理学者で、レーザー冷却により原子を捕捉する研究で1997年にノーベル物理学賞を受賞している。最近は生物学の分野まで研究領域を広げており、石油代替エネルギーの研究など温暖化防止のための活動に熱心な研究者としても知られている。全米科学アカデミー会員。シンポジウムの基調講演などで何度か来日しており日本人研究者にもよく知られている。

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