レビュー

原子力安全委の中立・透明性高める試み

2008.11.17

 原発の安全審査をする専門家が電力会社など申請者と何らかのつながりがある場合、原子力安全委員会がチェックすることが必要だなどとする提言を安全委の懇談会がまとめた、という記事が東京新聞の15日夕刊に載っている。共同通信の配信による記事のようだ。

 記事によると提言には、このほかいくつか原子力安全委が安全審査の中立性、透明性を高めるために必要とされる方策が盛り込まれている。非公開で詳細な審査をする委員会下部組織の記録はこれまで、だれがどんな発言をしたか分からない個条書きの「議事概要」しかなかったが、情報公開を進めるため、詳しく分かる「議事録」とし、発言者名を記すことも求めている。

 原子力安全委が懇談会を設け、議論を進めた理由は何か。記事は「近年、東京電力柏崎刈羽原発などで活断層の過小評価が相次いで発覚。原発の計画段階などで断層や地質に関し事前に電力会社に助言、指導した専門家が国の審査に参加したためではないかとして改善が必要とする指摘を受け、安全委懇談会を設置、検討してきた」と書いている。

 原子力安全委の役割は、省(原発の場合は経済産業省)の実施した安全審査が適切かどうか、ダブルチェエクすることだ。同委員会のホームページをのぞいてみると、これまでの懇談会の詳細な議事録が公開されている。懇談会というのは8月25日の原子力安全委員会で設置が決定されたもので、「安全審査における専門性・中立性・透明性に関する懇談会」が正式な名称になっている。最初の懇談会会合(8月29日)で、鈴木篤之・原子力安全委員長は「昨年の中越沖地震でほぼ全周期帯において想定した地震動を超えてしまった。これは明らかに昔の審査において地震動の想定が甘かったんじゃないのか。従って、そこの審査に加わった先生がおかしいんじゃないか、あるいは、そこで審査に加わった先生の意見を十分取り入れてなかったんじゃないか、こういう議論になっている」と懇談会設置の理由の一つを説明している。

 また原子力安全委の役割を「一言で言うと審査の過程が透明になっているということをもって、国民に対する説明を果たしていくということに尽きるのではないかなという感じがしている」とも語り、原子力安全委が国民から十分な信頼を得た組織であるには、安全委として努力が必要であるとの認識を示しているのが注目される。懇談会のメンバーも、日本学術会議が2006年10月に出した声明「科学者の行動規範について 検討にかかわった研究者を含めるなど、中立性、透明性を高めることの重要性を相当、感じているように見える。

 こうした動きは、多くのメディアが報じてくれるわけではない。原子力安全委は、一般国民にもっと関心を持ってもらうようもっと努力する必要があるのではないだろうか。

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