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アフリカ難民もう一つの負の側面

掲載日:2008年2月1日

密猟で個体数減少が心配されている
タンザニアのチンパンジー
© WWF-Canon / Michel GUNTHER

野生動物保護区に隣接した難民キャンプのために希少な野生生物がさらに危機に陥っていることが、国際自然保護団体の公表したリポートからあらためて浮き彫りになっている。

世界自然保護基金(WWF)によると、野生生物の取引を監視しているトラフィックのリポート「Night Time Spinach」(闇夜の食糧)は、カゲラとキゴマというタンザニア西部にある2つの難民キャンプで、食肉不足による大規模な肉の違法取引が行われている実態を明らかにしている。タンザニア政府は、難民キャンプ内での自足という難民保護政策をとっているが、違法に入手された野生生物の肉は日が暮れてから調理され、「闇夜の食糧」として難民キャンプ内で配られているという。

正常なルートで出回る牛肉より安い野生生物の肉は、多くの難民たちにとって文化的にもより受け入れやすく、かつ収入を得る機会を難民たちに与えるという背景がある。しかし、違法に入手された野生生物の肉のおかげで、難民キャンプの必要とする食肉量を国際社会が供給できていないという事実が覆い隠されてしまっている、とリポートは指摘している。

密猟で個体数が心配されている
セーブルアンテロープ
© WWF-Canon / Martin HARVEY

難民キャンプが周囲の野生生物生息地の環境劣化につながり、野生生物の急激な減少をもたらすことはこれまでも指摘されていたが、バッファローやセーブルアンテロープなどの草食動物が急激な個体数減少に見舞われているだけでなく、チンパンジーのような希少種も難民の肉の需要により脅威にさらされている、とリポートは警告している。

WWFによると、1961年にタンザニアが独立して以来、20以上の大規模難民キャンプが野生動物保護区、国立公園などの保護区に近接して造られ、2005年の調査時点でも、13のキャンプが存在していた。1990年代の半ば、2つの主要な難民キャンプで毎週7.5トン(推定値)の違法な野生生物の肉が消費されていた。

国際自然保護連合(IUCN)によると、サハラ砂漠以南では20%の野生生物種が野生生物肉の取引のために個体数を減らしている。野生生物がいなくなることにより、将来、その地域を訪れようとする人も減ってしまい、より深刻な経済的困難に直面することが心配されている。

狩に出る準備をする
難民キャンプ近くの人たち
© Simon Milledge/TRAFFIC

タンザニアにはアフリカでもっとも多くの難民がおり、国連難民高等弁務官事務所によると、2007年9月末時点で、カゲラとキゴマにある6つの難民キャンプだけで23万人の難民が生活している。

トラフィックは、野生生物の取引をモニタリングする世界最大のNGOで、ワシントン条約発効を受けて1976年に設立された。IUCNとWWFの共同事業として、世界22カ国に拠点を構えている。

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