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中学2年生の質量保存法則理解度は?

2007.11.29

 小・中学生とも理科で重視される考察力に課題がある、という文部科学省、国立教育政策研究所の調査結果が公表された(11月28日ニュース「小中学生の問題解決能力に課題」参照)。

 調査結果で示された数字に踏み込んで見てみたい。

 「中学2年生の方が小学5年生より正答率が低い」と一部で報道された問題は、「100グラムの水に20グラムの食塩を溶かした水溶液の重さ」を問うものだ。120グラムと正しく答えられたのは、小学5年生が63.2%で、中学2年生が59.4%という結果である。調査報告では「統計的な有意差はない」としているが、いずれにしろ中学2年生になっても、食塩を溶かしても、前の水だけの重さ(100グラム)と変わらないと考える生徒がいる(17.0%)、という結果である。

 調査報告書は「物質が水に溶けて見えなくなるとその物質自体がなくなってしまうと考えているものと思われる」と分析・考察している。

 ちなみに「100グラムより大きく、120グラムより小さい」と答えた中学2年生が20.2%。これに対しては「物質が水に溶けて見えなくなるとその物質自体がなくなってはいないが、質量が減少すると考えていると思われる」という分析・考察となっている。

 このような理解水準の生徒に対し、化学反応後における質量を問う意味がどの程度あるか、疑問視する人もいるかもしれないが、「2つの透明な水溶液を混ぜたら、黄色い沈殿物ができた。全体の質量はどうか」という“高度”な問題も中学2年生に課されている。

 調査は(1)「変化しない」という答えを選択し、さらに「気体が出入りしていないので質量が保存される」という趣旨の理由を書いてある (2)「この映像だけでは判断できない」という答えを選択、「気体が出入りしている可能性等を指摘して、『判断できない』」という趣旨の理由を書いている−の2ケースを正答としている。

 ただし、(1)「気体を取り込んだ可能性」などの理由を記述して「大きくなっている」 (2)気体の出入りには触れていないが「質量が保存される」という趣旨の理由を書いて「変わらない」 (3)「気体が発生している場合を想定して、質量が小さくなっている」という趣旨の理由を書いて「小さくなっている」−という3ケースも準正答としている。正答、準正答を合わせると45.0%になるという結果だ。

 いずれの問題も、ビデオの映像を見させて答えさせている。化学反応に絡んだ問題は、開放形で行われたことが容易に分かるようになっている。ただし、気体の出入りについて明示はしていない。仮に気体の出入りがないという条件を明示して、同様な問題を出したら結果はどうだったのだろうか。

 水に食塩を溶かした後の重さをきちんと答えられた生徒が59.4%しかいないのに、化学反応後の質量に対する問いの「正答」「準正答」が45.0%あったという結果を、本当に額面通り受け止めてよいものだろうか。

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