レビュー

会議内容はウェブサイトで速やかに公開を

2007.09.03

 休み明けの3日、黒川清・内閣特別顧問のオフィシャルブログをのぞいたら、「ヘルシンキから」という8月31日付の文章が載っていた。旧知のアホ・フィンランド国立開発基金(SITRA)総裁(元フィンランド首相)から電話で直接頼まれて、SITRAの会議で講演を行ったことが紹介されている。会議の行われた日がいつだったのか、この記事だけからは分からないが、会議の翌々日かその次の朝にはもう日本に戻ったと書いてある。関西空港経由で羽田に到着した日の午後には、文部科学省関係の仕事が待っていたという。

 このブログの中に「会議の内容は全てSITRAのウェブサイトで見ることができます」と書いてある。この個所をクリックすると、即座に該当のサイトに飛ぶ。遠く離れたヘルシンキの会議で氏がどのような講演をしたかが、会議主催者のウェブサイトの映像とスライドから、手に取るように分かるのだ。

 アルファベットと漢字かな文字の違いなのだろうか、日本の会議はここまでは進んではいない。せいぜい会議の前に配布される資料の中に講演者が用意したと思われる講演要旨か、スライドだけをそのまま印刷したものが提供されるくらいだ。実際に話された内容が、印刷物あるいはウェブサイトでだれでも見ることができるのは、相当の日時がたってから、というのが大半ではないか。後からでもとにかく全文を文章化して公表されるケースですら、まだほんの一部だろう。講演内容をすべて書き起こす費用がばかにならないのが、大きな理由になっているのだろうか。

 当サイトのコラム欄で間もなく紹介する日本学術会議主催シンポジウムの講演内容(要旨)も、編集者がふうふう言いながらメモした内容を文章化し、講演をされた先生にメールで送って幸運にも手直ししていただく、という手順を踏んだ。記事は見違えるほど正確で分かりやすくなったが、その代わり、当サイトで多くの人に読んでもらうまでに、少々時間がかかる結果となった。

 科学技術の理解増進を重視するなら、大事な会議の講演などは、多少費用がかかってもすぐにウェブで公開する方向を目指すべきではないだろうか。結局は会議にかかる費用配分の問題だろうから。

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