レビュー

イノベーション政策重視の英国新政権

2007.08.01

 6月27日に就任した英国のブラウン新首相は、直ちに省庁再編を行い、科学・イノベーション重視の姿勢を明確に打ち出した。日本貿易振興機構(ジェトロ)ホームページの海外注目ビジネストピックス(7月11日付)は、ブラウン首相の省庁再編を「学界は歓迎、産業界は科学と産業の分離に懸念」と伝えている。

 当サイトに掲載されている英国在住のフリーランス・コンサルタント山田直氏のレポート「英国大学事情」最新号が、ブラウン首相の省庁再編の狙いを詳しく紹介している。

 再編の対象となったのは、教育技能省と貿易産業省である。この2つの省が分割、再編されて「イノベーション・大学・技能省」、「児童・学校・家庭省」、「ビジネス・企業・規制改革省」に変わった。

 教育技能省は、初等・中等教育部門と、高等教育・技能部門に分割された。高等教育・技能部門に旧貿易産業省の中にあった「科学・イノベーション庁」が併合され「イノベーション・大学・技能省」が誕生し、初等・中等教育部門は「児童・学校・家庭省」となった。一方、「科学・イノベーション庁」を切り離された旧貿易産業省は、従来、内閣府にあった規制改革担当業務を加えて「ビジネス・企業・規制改革省」となった。

 山田氏は、「ブラウン新首相は、科学イノベーション庁が所属していた貿易産業省の実績には不満足であったとも報道されていた」という背景とともに、「科学・イノベーションと緊密な関係にある高等教育・技能分野との統合により、両者間のより緊密な政策を打ち出すことを狙ったものであろう」と解説している。

 「児童・学校・家庭省」の創設については、「家庭をめぐる諸問題や児童福祉等の広範囲の問題が関係するため、これらの機能を横断した専門の省の新設を決断したのであろう」とコメントしている。

 イノベーションを生み出す仕組みをいかに作り上げるか、児童と若者の教育、健康、社会福祉をめぐる問題をいかに解決にするかで先進各国政府は一様に苦慮していると思われる。国会承認が必要な日本と異なり、英国では省庁再編は首相の意思でできるという。科学部門は、これまで教育省から内閣府、貿易産業省と所管が代わった歴史があり、今度また高等教育部門と結びついたことになる。

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