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論文分析による研究評価は適切か?

掲載日:2007年7月4日

米国の科学技術情報提供会社トムソンサイエンティフィックが11日、学術シンポジウム「研究評価におけるビブリオメトリックス手法の意義」を学士会館で開催する。

最近、日本の大学や研究機関あるいは研究費などの審査の現場では、トムソンサイエンティフィック社が提供しているインパクトファクターがよく引き合いに出されるという。研究評価に当たって少々、安易に扱われていないのか、心配だ。

例えば、研究者の採用などで評価を行う場合、審査する側は採用候補者の発表論文のリストとその中でも最近の「自信作」とされる論文のコピーを読むわけだが、専門分野でないとなかなか評価は難しいだろう。結局、論文が載った雑誌のインパクトファクターで判断してしまうことになってはいないだろうか。

また科研費をはじめとする研究費の審査の際も同様だ。1日に何十という申請書を読まなければならないため、結果的には、計画の内容ではなく、読みやすさと論文が載った雑誌で評価していることはないだろうか。

インパクトファクターは、特定のある雑誌が1論文あたり、平均何回引用されているかを算出したものだ。雑誌の重要度を示す指標であって、それをそのまま個々の論文評価に代用できるものではない。

こうしたことへの反省からか、最近では研究機関の評価を行う場合には、安易にインパクトファクターを使うのではなく、もう少しきちんとした論文分析をしようという動きが見られるのは何よりだ。さまざまな分析ツールを使うことで、例えば、機関に所属する研究者の論文がどれだけ実際に引用されているかも分かるようになったという。

ただし、ここでも気を付けなければならないのが、被引用数は分野によって異なることや、意味がない場合すらあるということだろう。一般に被引用数はライフサイエンス系で多いとされているが、その中でも実験系のモデル動物を創り出した研究者などは飛躍的に被引用数が多くなるし、逆に全く新たな領域を創り出した場合には、しばらくの間、ほとんど引用されない。

数学研究などでは、そもそも論文出版数自体が少ない上、あまり引用するということもない。

11日のシンポジウムでは、論文分析による研究評価によって分かることと分からないこと、実際にどのような場面では有効な手法なのか、などについて講演とパネルディスカッションが行われる。トムソンサイエンティフィック社のアナリストたちだけでなく、大学評価・学位授与機構など実際に研究評価を行っている機関の研究者や行政担当者たちも講演し、パネルディスカッションに参加する。

トムソンサイエンティフィック社がこのような学術シンポジウムを主催する姿勢は大いに評価する一方、気になることもある。研究費の重点的、効果的な配分が強く叫ばれている現在、こうしたシンポジウムは本来、米国の科学技術情報提供会社が主催するのではなく、日本のしかるべき機関が開催すべきものではないだろうか。

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