レビュー

新しい価値の創造を促す社会とは

2007.07.02

 「グローバル・イノベーション・エコシステム2007(GIES2007)—躍動する世界を目指して—」というシンポジウムが、29日経団連ホールで開かれた。

 内閣府、日本経済団体連合会、日本学術会議、GIES2007組織委員会の共催によるシンポジウムで、満員の参加者がこのテーマに関する関心の深さを裏付けていた。意見の言い放しでは意味がないという主催者の思いからだろう。閉会のあいさつに併せて組織委員会声明が発表された。

 イノベーションについて言われている重要な指摘をすべて盛り込んだようにも見えるが、いくつかの表現から、イノベーションに関する議論の流れのようなものを読み取ることができそうだ。8項目の提言の中に以下のような記述がある。

 「イノベーションの創出を促す環境(場)を実現するため、異なる価値観の積極的な相互作用による新しい価値の創造を促す社会を実現する」

 「イノベーションの活性化に有効な市場・投資システムを構築する」

 このシンポジウムとは別に、6月14日に開かれた第68回総合科学技術会議では、原山優子議員(東北大学大学院工学研究科教授)が次のような発言をしている。

 「イノベーションというのは計画的に起こすことはできない。しかし、起こしやすい環境を整えることは可能」

 「困ったときのイノベーション頼み」。29日のシンポジウムで基調講演を行った黒川清・内閣特別顧問(イノベーション25戦略会議座長)が冗談を言ったくらいに、いまイノベーションという言葉があふれている。しかし、政府のイノベーション25戦略会議が5月25日に公表した「イノベーション25」に盛り込まれた諸課題を実現するためには、まずそのために必要となる環境整備だけでも、まさにイノベーティブな挑戦であるように見える。詰まるところ「縦割り行政」「タテ社会」といった言葉に代表される日本の伝統的な仕組みや考え方にまで踏み込んだ「創造的な破壊」がないと、目に見える成果は望み薄ということだろうか。

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