レビュー

IAEAが原子力安全・保安院の人事政策にも関心

2007.06.22

 国際原子力機関(IAEA)のレビューチームは25日から30日まで、日本の原子力安全規制についての法制度や規制組織などの評価を行う。

 昨年9月18日、ウィーンで開催されたIAEA総会で、松田岩男・科学技術政策担当大臣(当時)が、IAEAの総合的規制評価サービス(IRRS)を受け入れることを表明した。

 今回のレビューは、日本の法制度、規制組織などを材料に、原子力安全規制にかかわる幅広い政策課題について政策対話形式で行う。日本が事前に行った自己評価と2月に実施した準備会合の結果を踏まえ、IAEAは、規制機関の組織関係、内部の意志疎通、原子力安全・保安院の人事政策、保安員の組織構造と検査制度など13項目の政策課題を提示しており、これらについてピアレビューが行われる。

 レビュー結果は、数カ月後にはIAEAの報告書として取りまとめられ、公表されることになっている。その後、日本の原子力安全規制に反映されるかどうかは未定だが、今回、IAEAが原子力安全・保安院の人事政策についても政策課題として取り上げたことは、日本の検査制度に不信感を持っていることの現れともみられる。

 昨年度末までに、日本中の電力会社が過去の不祥事を報告した。これだけの事故などが起こっていたにもかかわらず、原子力安全・保安院が報告を受けるまで気がつかなかったことに、国民は大きな不信感を持ったが、IAEAも同様の関心を持っている。IAEAの関心の一つが、検査官や関係職員が数年で替わってしまう日本の人事制度で、これでは欧米のような10年以上のキャリアを持った専門家が育ちにくいのでは、という疑問だ。

 今回の総合的規制評価サービスで、人事制度についてどのような指摘がなされるかは、IAEAの報告書が公表されるまではわからない。政府全体でPDCAサイクル(注)をまわすためのさまざまな取り組みが行われているが、こうした外部評価をどのように政策に反映させるのか、日本政府の見識が問われることになるかもしれない。

 (注:PDCAサイクル=品質管理の父といわれるエドワード・デミングが1950年代に提案したマネジメント手法。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字をとっている。PDCAのサイクルによって品質の維持・向上と継続的な業務改善活動を推進するのが狙い。

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