レビュー

インターネット時代に追いつかない法整備?

2007.03.06

 インターネットの表裏にうとい人々は、ただ唖(あ)然とするほかないのでは。そんな話を5日の読売新聞夕刊が、1面と社会面を使い詳細に報じている。

 「ネット利用者の4分の1が月に1度は閲覧している計算」という人気サイト「2ちゃんねる」の民事訴訟を巡る話だ。

 だれでも自由に書き込める「2ちゃんねる」への誹謗中傷の書き込みなどを巡り、サイトの管理者である西村博之氏を相手取って、「名誉毀損などを訴える民事訴訟が全国で50件以上起こされ、少なくとも43件で西村氏側の敗訴が確定していることが読売新聞の調べでわかった」という。

 これだけでも驚く人は多いだろう。しかも、賠償額が仮処分命令などに従わないことによる「制裁金」を合わせると「累計約4億3400万円に上るが、西村氏が自ら支払いに応じたケースはほとんどないと見られる」とあっては、なおさら。

 「日本の民事訴訟は執行の面に問題があり、なかなか実が取れない。相手の資産を開示させる手段がないのが一番の問題だ」という弁護士の言葉が、紹介されている。

 西村氏個人の資産が把握できないので、勝訴した側にとっては、賠償額はまさに絵に描いた餅になってしまっている、ということのようだ。

 インターネットが普及するまで、このような法律上の問題点は、あまり議論されなかったのだろうか。それとも、西村博之氏のものの考え方が、普通の人々の常識をはるかに超えて“進化”しているため、圧倒的多数の人々(法曹界を含め)にとってはなすすべがない、ということなのだろうか。

 研究者にとっては、あまりに特異なケースで、関心を示しにくいのかもしれない。しかし、法学者たちが例えば日本学術会議や学会の名で、社会に対して見解を発信したらどうだろう。多くの人々が、耳を傾けるのではないだろうか。(読売新聞の引用は東京版から)

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