レビュー

資源大国ロシアの攻勢で世界は

2007.01.17

 「資源こそ国家なり−」。日経新聞の17日朝刊から始まった1面の連載「新国家資本主義の波−ロシア・中国の台頭」は、ロシアの最近の動きをこのように表現している。

 正月早々に起きたロシアによるベラルーシ経由欧州向け原油輸出停止は、日経新聞記事によると「ロシアが天然ガスの価格を2倍以上に引き上げ、輸出原油の免税措置を撤回。ベラルーシがこれに憤慨して送油を止めた」。

 一方、10日の読売新聞朝刊国際面のモスクワ発記事によると「ロシアがベラルーシ経由の欧州向け原油パイプラインの送油を停止した問題は、これまで『同盟国』扱いしてきたベラルーシのルカシェンコ政権に対して仕掛けた『通商戦争』であることが明白になった」という。

 このパイプラインによって原油の提供を受けている西欧諸国に打撃を与えるためでなかったことは明らかなようだが、今回の送油停止で、ポーランド、ドイツ、スロバキア、ハンガリー、チェコが、数日間だが、原油供給をストップされている。

 当然のことながら、これら欧州諸国のロシアに対する不信感は大きい。

 「『冷戦時代でさえ信頼できるパートナーだったのに、これでは協力関係を築けない』。欧州連合(EU)議長国のメルケル独首相は9日、送油停止を受け、異例の強い調子でロシアを批判した」(日経新聞17日朝刊連載記事)という事態になっている。

 豊富なエネルギー資源を背景にしたロシアの強硬姿勢については、すでに日本も資源開発事業「サハリン2」の株式の5割超をロシア企業に譲渡させられる、という痛い目に遭っている。

 この先、ロシアの資源外交で国際社会が振り回されるのは必至、というのが、日経、読売をはじめとする各紙共通の見方のようだ。

 中でも注目されるのが、EU諸国のエネルギー政策の見直し、特に原子力に対する見直しの機運を加速するかどうかだろう。

 東京新聞10日朝刊国際面のベルリン発記事は「ドイツは2021年をめどに原発の全廃を目指すが、発電量の4分の1を占める原発を廃止すれば、ロシア依存の改善は難しい。このためドイツ政府高官からも脱原発政策の見直しを示唆する発言が出ている」と伝えている。

 地球温暖化対策をはじめとする環境問題が追い風になり、使用済み燃料の再処理、リサイクルを含めた原子力に対する見直しの機運が世界的に高まりつつある、といわれる。

 EU諸国の中でも最も鮮明な脱原発政策を掲げているドイツの原子力政策見直しを、ロシアの資源外交が後押し、となると影響は大きい。

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