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政府がインドとの原子力協力容認へ?

2007.01.10

 核兵器を保有するインドに対し、日本企業が原子力発電所建設などに参入することを容認する方針を政府が固めた、という記事が、10日の読売新聞朝刊にトップ記事として載っている。

 ほかの新聞は報じていないので、公表する段階までは、政府内の作業は進んでいないと思われるが、検討が進んでいるのは間違いないのだろう。

 米国、英国、フランス、中国、ロシアの5カ国を核兵器保有国、それ以外の国を非核兵器保有国と、明確に区別し、非核兵器保有国の原子力技術、核物質を国際的な監視下に置く、というのが核不拡散条約の柱である。この枠外で原子力利用を進めようとする国は、NPT加盟国からの国際的な制裁を覚悟で進める以外ないということだ。

 従って、読売の記事が伝えるように「政府はこれまで、民生用原子力利用への協力をNPT加盟国に限定してきた。インドへの協力が実現すれば例外となるだけでなくインドの核保有を事実上容認することにつながる」という論議が必至になる。

 そもそもの発端は、記事に示されているように、インドの核保有を認めたうえで原子力平和利用の協力を進める合意が、1昨年、米国とインドとの間に成立したことにある。

 昨年5月に日本原子力研究開発機構が主催した「核不拡散科学技術国際フォーラム」でも、当然のことながら、この米国-インドの原子力協力は、論議の対象になっている。

 米国代表からは「インドの増大するエネルギーを原子力で賄うとの視点から重要であり、当該協力はNPT上インドが非核兵器国であるという位置づけを変えるものでなく、現在、インドの原子炉のうち81%が保障措置対象ではないが、将来的に原子炉の90%を保障措置対象にすることにより、インドを核不拡散体制に取り込むことができる」という説明が、行われた。

 このようなプラス面と、他方「インドにのみ例外措置を認め、NPT加盟により核兵器開発を放棄し原子力の平和利用を認められた国と同等の取り扱いをすることには問題がある」(同フォーラムでパネルディスカッションの座長を務めた浅田正彦・京都大学大学院法学研究科教授)というマイナス面を比較、さらに地球温暖化対策の観点から、原子力に対する見直しの機運が国際的に高まっているという内外の情勢なども考慮した上で、日本としての態度決定を迫られている、というのが実情だろう。(読売新聞の引用は、東京版から)

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