レビュー

国富んで理工系大学冬の時代に?

2006.12.11

 6日の朝日新聞夕刊の紙面構成が目を引いた。

 1面のトップが「理工系の大学『営業』に必死—志願者減り危機感」で、すぐその下、2番手格の生ニュースは「『豊かな』国 日本が1位—世界の『富』1人2000万円保有」というニューヨーク発の記事である。それぞれデンと大きなスペースを占めていた。

 トップ記事の方は、まず、東京工業大学の新しい試みを紹介している。韓国の人気ドラマ「冬のソナタ」などを見せて講義を進める「グローバルメディア文化論」や、立ち見まで出た「精神医学入門」。いずれも、猪瀬直樹、吉本隆明ら著名人を特任教授に招いて4月に発足した「世界文化センター」が、「学生が関心を持ちそうな講義」として始めた、という。

 東京大学も7月に、工学部独自の広報センターを開き、ロボットなどを展示し、鳥取大学、岩手大学などの地方国立大学も、地元高校に教授らが出向き「出前授業」を行う、などなど、理工系の人気低落を巻き返すための必死の策を紹介している。

 一方、ニューヨーク発の記事は、国連大学世界開発経済研究所の調査を基にしている。

 「2000年時の各国政府や国際機構の統計をもとに、不動産や預貯金などの個人の資産から借金などの負債を差し引いたものを「富」と定義した」ところ、「国別に見ると日本は1人あたりの富が18万1千ドル(約2000万円)でトップ。米国の14万4千ドルを上回った」と伝えている。

 国際収支の実態からみると、日本は、ものづくり立国というより「金貸し立国」になっているのでは、という指摘や統計数字は、これまでにもある(11月14日レビュー参照)。

 だから、どうすべきかということになると、理工系人気を復活することより難しい話かもしれない。あるいは、こうした現実を併せて考えない限り、科学技術立国もかけ声倒れになる恐れがある、ということだろうか。(引用は朝日新聞東京版から)

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