レビュー

研究とユーモア

2006.10.12

 7日付け朝日新聞夕刊1面「土曜フォーカス」欄のイグ・ノーベル賞授賞式ルポが面白い。イグ・ノーベル賞は日本人が11人も受賞していることもあって、すっかり有名になった。でも授賞式がハーバード大の講堂で行われ、本物のノーベル賞受賞者がボランティアなどで参加しているとは知らなかった。

 “本物・ノーベル賞”を独り占めにしているから“ニセモノ・ノーベル”を楽しむ余裕があるのか、研究者にユーモアを楽しむ余裕があるから、いくつも“本物・ノーベル賞”がとれるのか。どちらなのだろうか?

 数年前、出版された「検証・なぜ日本の科学者は報われないのか?」という米国人社会科学者が書いた本の中で、日本の大学は「ユーモアに乏しい実験室」という項目があり、わが意を得たりと思った記憶がある。

 米国の研究室を取材した経験では、ドアに自嘲気味な漫画の切り抜きが貼ってあったり、室内に研究と関係ない楽器やオブジェがころがっていたりしてニヤリとさせられることが良くあった。日本ではそうした経験はほとんどない。この違いはいったい何なのか?

 「科学大国・米国の奥深さとおおらかさ」を伝える、現地駐在の科学記者のこうしたレポートは貴重で、読む方にいろいろ考えさせてくれる。

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