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臓器売買は氷山の一角か

掲載日:2006年10月6日

臓器売買を禁じた臓器移植法違反の疑いで、愛媛県宇和島市の男女が、1日、愛媛県警に逮捕された。

1997年にできた臓器移植法は、脳死移植に道を開く一方、臓器売買を禁止した。さらに、日本移植学会が定めた「倫理指針」は、今回のケースのような生体からの臓器移植について、臓器提供者を親族(6親等以内の親族と3親等以内の姻族)に限り、これ以外の場合は医療施設の倫理委員会の承認を必要とするなどの制約を課している。

またこの指針も、臓器売買を禁止している。

今回のケースで、容疑者たちは医師に対して、提供者を妻(実際は内縁)の妹と偽り、提供者には現金の報酬を約束していた。その上、約束の報酬を支払わなかった。

このような稚拙なやりかたでは、いずれ明るみに出るのは当然、と受け止めた人は多いだろう。同時に、もう少しうまくやって、表面化しなかった法律違反の臓器移植が、ほかにもあるのでは、と考えた人も。

逮捕を伝える各新聞の記事や社説などを読むと、起こるべくして起きた事件、という印象を持つが、3日、4日と2日続けて朝刊の「こちら特報部」でこの問題を追った東京新聞の記事にも、目を引く事実が紹介されていた。

「実際に持ちかけられたことはないが『タイ、フィリピン、中国で簡単に腎臓が買える』という噂は常にあり、値段は1千万から2千万円と聞いた」

「移植を受けたいという日本人を募り、中国で手術を受けさせる…中国専門の臓器移植コーディネーターは日本に15人くらいいる…。手術にかかる費用は6百万-1千万円。この男性が扱った日本人患者は30人ほどに上る」

前者は、NPO法人東京腎臓病協議会の会長で、自身12年間透析を受けている榊原靖夫さん、後者は、中国での臓器移植をコーディネートしてきた男性からの話として、紹介されている。

日本国内で人工透析を受けている患者は、25万7千人。死体からの腎臓移植を希望して、日本臓器移植ネットワークに登録している透析患者は1万千5百人。これに対し、2004年の1年間に行われた腎臓移植は9百例で、そのうちの8割は生体移植が占めており、心臓停止後と脳死者からの移植は合わせて173例しかない。

急降下するこれらの数字が意味するのは、人工透析を受けている人の大半は、移植の順番が回ってくる望みの小ささから、あきらめて移植ネットワークへ登録せず、登録した人もまた、実際に移植を受ける可能性はきわめて小さい、ということだ。

「いくら調べても患者にだまされるのは防げないと思う。(臓器売買は)氷山の一角ではないかと、全国の医師が思っている。兄弟間でも金銭の授受はあるかもしれない。(移植の)背後で何が行われているかは分からない」

東京新聞が伝える、今回の事件で容疑者の移植手術を行った医師のことばである。(引用は東京新聞から)

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