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台風19号などの豪雨・洪水被害をスパコンで再現 温暖化リスクシンポで報告

掲載日:2019年10月24日

文部科学省の「統合的気候モデル高度化研究プログラム」は21日、東京都千代田区の一橋講堂で「地球温暖化に備えるために ~必要な予測、想定すべきリスク~」と題する公開シンポジウムを開催。気象分野の研究者が、今回甚大な被害を出した台風19号のような大きな台風による豪雨や洪水のシミュレーションなど、最新の研究成果を紹介した。

「統合的気候モデル高度化研究プログラム」は、21世紀末の地球の気候を予測できるスーパーコンピューターの計算モデルを開発し、さまざまな地域でシミュレーション結果と実際の気候を比較。起きるかもしれない自然災害を予測する横断的な研究計画で、「いろいろまとめて気候のシミュレーションで使う計算式を良くしていく」という分かりやすい副題がついている。

シンポジウムでは、趣旨説明に続いて登壇した国立環境研究所気候変動適応センターの肱岡靖明副センター長が「将来の豪雨予測で、データの解像度が250メートルだと洪水被害額の見積もりが263億円となり、1キロメートルの場合の見積額409億円よりかなり減った。モデルごとの違いよりも差が大きくなる」として、詳細なデータの必要性を強調した。また、自治体などが対策を立てるための解像度はどれくらいが適切なのか問題提起した。

京都大学防災研究所の竹見哲也准教授は「もし温暖化した現在に伊勢湾台風クラスの台風が来襲したと仮定すると、中心気圧で10ヘクトパスカル、最大風速で7~8メートルは強くなる。温暖化は災害のリスクを助長する」とし、台風19号の解析では「上空に大量の水蒸気が流入し、広域で上から下まで非常に湿っていた。これが昨年7月の西日本豪雨並みの大雨を引き起こした。こうした流入は今後、まれではなくなる」と指摘した。

東京大学生産技術研究所の芳村圭教授は、豪雨後の河川氾濫を流域ごとに予測するモデルを開発中であると述べた。2015年の鬼怒川豪雨による氾濫を発生39時間前に70パーセントの確率で、15時間前には100パーセントの確率で予測することに成功したという。台風19号については「まだ解析途中だが、13日未明に起きた千曲川の氾濫をモデルは11日午前の時点で予測していた。多摩川と荒川・渡良瀬川・鬼怒川の上流の氾濫も予測した」と語った。

国は地球温暖化に伴う農作物被害や気象災害などの軽減を目指す「気候変動適応法」を2018年6月に成立させた。人為的温暖化を抑えるための緩和策だけでなく、気候変動に対処する適応策にも積極的に取り組む姿勢を世界に先駆けて打ち出した。近年は、想定を超える気象の極端現象が増えており、スパコンを使った研究を通じて被害規模などをあらかじめ把握し、最善の措置をとることの重要性が高まっている。

台風19号で決壊した千曲川の堤防(10月13日午前6時20分ごろ 国土交通省撮影)(国土交通省北陸地方整備局提供)
台風19号で決壊した千曲川の堤防(10月13日午前6時20分ごろ 国土交通省撮影)(国土交通省北陸地方整備局提供)
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