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太陽に最接近してコロナの謎に迫る NASAが探査機を打ち上げ

2018.08.16

 特殊な断熱材で防護して超高温の太陽コロナの謎に迫る−。太陽の外周にある超高温のコロナを直接調べる太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」を米航空宇宙局(NASA)が12日、米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から大型ロケット「デルタⅣヘビー」で打ち上げた。これまでの探査機の中で最も太陽に接近して謎に包まれている太陽コロナを詳しく調査する。太陽に向け飛行中の今年12月には最初の観測データを送ってくるという。

 NASAによると、太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」は金星の重力も利用して約7年の間に太陽を24周しながら少しずつ太陽に近づく。最接近距離は太陽表面から約610万キロ。1,400度近い高熱にさらされるために機体は厚さ約11センチの炭素素材を使った特殊な断熱材で保護されている。

 太陽コロナは100万度を超えるとされる。探査機はコロナの中に突入するが、コロナを構成するプラズマ粒子は密度が低く、探査機が毎時約70万キロもの超高速で移動するため機体には一部の粒子しか到達しない。このため機体に伝わる熱エネルギーは限られて機体表面の温度はせいぜい1,400度程度という。

 太陽は地球上の人類にさまざまな影響を与えてきた極めて身近な天体だ。しかしこれまでの研究では、表面が6,000度程度なのにコロナはなぜ100万度を超えるのか、など多くの謎に包まれている。

 NASAは1970年代に当時の西ドイツと太陽を観測する探査機ヘリオス1、2号を打ち上げているが、太陽表面との最短距離は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙情報センターによると、約4,500万キロだった。今世紀に入ってから計画された本格的な太陽探査機は「パーカー・ソーラー・プローブ」が初めてで、最新の技術を駆使して完成した同探査機は太陽表面から約610万キロという、宇宙の尺度では“至近距離”に接近。コロナが超高温になったり、太陽風が加速したりするメカニズムを解明するためのデータを収集する。

 「パーカー・ソーラー・プローブ」は、米国の宇宙物理学者ユージン・ニューマン・パーカー博士(91)の名前にちなんで名付けられた。NASAなどによると、パーカー博士は1927年生まれ。太陽研究の第一人者で、50年代に太陽風などに関する多くの基礎概念を提唱するなど、太陽の研究に多大な貢献をした。また米ユタ大学やシカゴ大学などで教壇に立って多くの後輩を指導した。2003年には京都賞を受賞している。博士は12日未明の打ち上げを見守った。

画像 太陽に接近する太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の想像図(提供・NASA)
画像 太陽に接近する太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の想像図(提供・NASA)
写真1 米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられる太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」を搭載した大型ロケット「デルタⅣヘビー」(提供・NASA/Bill Ingalls)
写真1 米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられる太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」を搭載した大型ロケット「デルタⅣヘビー」(提供・NASA/Bill Ingalls)
写真2 自分の名前を冠した太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の打ち上げを見守るパーカー博士(米東部時間12日午前3時半すぎ)(提供・NASA)
写真2 自分の名前を冠した太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の打ち上げを見守るパーカー博士(米東部時間12日午前3時半すぎ)(提供・NASA)

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