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吉野英、年吉洋、山子茂各氏ら6人に今年の井上春成賞を授与

2018.07.19

 企業化された独創的研究の中でも日本の科学技術、経済の発展や福祉の向上に貢献した研究者と企業に与えられる井上春成賞の贈呈式が18日、東京都千代田区の日本工業倶楽部会館で行われた。同賞は今年(平成30年度)で第43回。贈呈式では賞を運営する「井上春成賞委員会」(委員長・濵口道成・科学技術振興機構理事長)の濵口委員長から賞に選ばれた3研究課題の研究者、企業代表者それぞれ1人ずつの計6人に表彰状と賞牌が贈られた。また3人の研究者に「新技術振興渡辺記念会」(武安義光理事長)から研究奨励金が贈られた。

 授賞対象研究課題と授賞者は次の通り。

  • 「新規筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬としてのエダラボンの研究開発」。
    研究者・吉野内科・神経内科医院の吉野英院長。
    企業・田辺三菱製薬の三津家正之社長。
  • 「高速MEMS光スキャナを用いた医療・非破壊検査用OCT光源の開発」。
    研究者・東京大学先端科学技術研究センターの年吉洋教授。
    企業・サンテックの鄭台鎬社長。
  • 「新リビングラジカル重合法による高機能粘着剤・分散剤の開発」。
    研究者・京都大学化学研究所の山子茂教授。
    企業・大塚化学の原島丈治社長。

 吉野内科の吉野院長は、発症原因の一説であるフリーラジカルに着目。2001年に脳梗塞の急性期治療薬として承認されていた「エダラボン」が、細胞を傷付けるフリーラジカルを消去して細胞を保護する働きがあることからALSに有効ではないかと考え、自主的な臨床試験に着手。さらに田辺三菱製薬による臨床試験(第3相試験)で有効性を確認してもらうなどして田辺三菱製薬とともにALS新治療薬として2015年の承認取得へ導いた。その後米国でもALS治療薬として承認された。

 ALSは、症状が進むと全身が動かなくなり、やがて歩行や呼吸が困難になる厚生労働省指定の難病。発症割合は少なくとも年間10万人に1人とされ、患者は国内で約9,400人(2015年度末)で、世界では推定約35万人。40歳代以上が多く、最多年代は60歳代。男性が女性の約2倍とされる。

 東京大学先端科学技術研究センターの年吉教授とサンテックは、半導体微細加工技術を利用し、シリコン基板上などに微小な可動機械構造を製作する技術である「MEMS」を光ファイバー通信機器などに応用する産学共同研究を実施。MEMS技術を使った光源(波長可変光源)をOCT(光断層計測法)装置に組み込んで製品化。高速動作するMEMS光スキャナを開発し、眼底検査をはじめとする医療診断や非破壊検査分野に貢献した。

 京都大学化学研究所の山子教授は、小分子化合物を対象にした有機合成・反応化学研究を背景に有機テルル化合物を用いて「新リビングラジカル重合法」(TERP法)と呼ばれる重合法を開発。大塚化学とともに研究開発を進め、TERP法を改良しながら機能性高分子を合成する新たな技術を確立し、高機能の粘着剤や分散剤の開発につなげた。

写真1 吉野 英 氏
写真1 吉野 英 氏
写真2 年吉 洋 氏
写真2 年吉 洋 氏
写真3 山子 茂 氏
写真3 山子 茂 氏

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