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政府、気候変動適応法案を閣議決定 被害抑制へ地域にも対応求める

2018.02.21

 政府は20日、気候変動の影響が既に顕在化して今後さらに深刻化する恐れがあるとし、農作物への打撃や、災害や異常気象による被害などを抑えることを目的とした「気候変動適応法案」を閣議決定した。国のほか、地方自治体や事業者が担う役割を明確化しているのが特徴。国には「気候変動適応計画」の策定を求めたほか、自治体にも「努力義務」として地域の状況に応じた「地域気候変動適応計画」づくりを進めるよう明記している。

 現在、温室効果ガス排出量を削減するための国際的な取り組みが進められている一方、気候変動による影響は将来避けられないとして「適応策」の重要性が国内外で指摘されてきた。「気候変動適応法案」づくりはこうしたことを受け、環境省が中心となって関係省が連携して進められた。

 法案は、「適応の総合的推進」「情報基盤の整備」「地域での適応の強化」「適応の国際展開等」の四つが柱。「適応の総合的推進」としては、政府に「気候変動適応計画」の策定を、環境相に気候変動の影響をおおむね5年ごとに評価することを、それぞれ義務付けた。政府は既に同計画を策定(2015年11月27日閣議決定)しているが、この影響評価結果を基に計画内容を見直す。

 「情報基盤の整備」として、国立環境研究所(茨城県つくば市)を、気候変動の影響や適応の情報収集・提供に関する国レベルの拠点と位置付けた。「地域での適応の強化」としては、都道府県や市町村にも気候変動影響や適応の情報収集・提供をする「地域気候変動適応センター」としての機能を担う努力を要請している。気候変動による影響や適応策は地域によって異なるための措置で、被害抑制のために地域にも対応を求めた形だ。このほか、「適応の国際展開等」として、適応に関する国際協力を推進し、事業者には、気候変動への適応に寄与する「適応ビジネス」を促進してもらうことなどを求めている。

 環境省は法案の概要説明の中で「日本の年平均気温は、100年あたり、1.19度の割合で上昇している。今後さらなる上昇が見込まれる」と明示した。また、気候変動による影響として、コメが白濁する「水稲の白未熟粒化」やミカンの皮が浮く「ミカンの浮皮症」などの農作物被害例を挙げた。既に進んでいるサンゴの白化など生態系への影響のほか、将来、強い台風や熱中症患者の増加する可能性なども例示している。

 また同省は適応策の具体例として、高温耐性の農作物品種の開発普及、魚類の分布域の変化に対応した漁場の整備、堤防・洪水調整設備の整備、ハザードマップ作成の促進などを挙げている。

写真 サンゴの白化(提供・環境省/同省の「気候変動適応法案の概要」から)
写真 サンゴの白化(提供・環境省/同省の「気候変動適応法案の概要」から)

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