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「流れ藻」は、やはりブリの子の隠れ家だった

掲載日:2017年7月4日

雑魚(ざこ)は群れたがるという。ここで取り上げるのは、あのおいしいブリやカンパチの稚魚だから雑魚といっては失礼だが、やはり「流れ藻」に群れる。では、なぜそこに群れるのか。この素朴な疑問に迫る研究成果を、長崎大学の河端雄毅(かわばた ゆうき)准教授らの研究グループが、このほど発表した。

海底に生えている海藻は、強い流れなどでちぎれると海面を漂う。これを「流れ藻」という。流れ藻には、小魚たちがしばしば寄ってくる。河端さんらが研究対象にした長崎県・五島列島周辺の海域でも、こうして集まるブリの稚魚を捕獲して養殖に使う。

河端さんらは、流れ藻に集まる稚ブリの行動を調べるため、この海域に多い海藻のアカモクとカメラを組み合わせた無人の観測用いかだを組み立てた。それを2013年と2014年の4~6月に海に漂わせ、体長が5~15センチメートルほどに育った稚ブリの集まり具合を観察した。

全体として、稚ブリたちは夜になると藻の直下にぴったり寄り添うように集まり、昼間はすこし離れて泳ぐ傾向にあった。夜は目が見えにくいので、「集合場所」として分かりやすい流れ藻を利用しているらしいという。

ただし、このように昼夜の違いがはっきりしているのは、群れを構成する稚ブリの数が多い場合。数が少ないときは、昼間でも藻の近くにとどまっていて、シイラなどの天敵に狙われると、急いで藻の中に逃げ込んでいた。大きな群れになるほど、大胆に藻から離れていたのだ。

大きな群れになるほど大胆になっていた理由について、河端さんらは、次のように考察している。

小魚は、たくさんの数で群れていたほうが、天敵に捕食される1匹あたりのリスクが小さくなる。その一方で、避難所や隠れ家として機能している藻からすこし離れたほうが、えさにありつきやすいこともある。どちらが生存に有利なのか。そのバランスで、群れの行動が決まる。

群れが大きいと自分が捕食されるリスクが減るので、えさを優先して藻から離れる。群れが小さいときは、捕食されるリスクを重く見て、藻の近くにとどまる。大きな群れの構成メンバーが藻から離れるときも、無防備に離れるわけではない。完全に1匹1匹がばらばらになってしまうのではなく、やはり小さな群れで団体行動して、捕食されるリスクを下げていることがうかがえた。

今回の観察では、1週間ほどの長期にわたって、何回もいかだを流している。このとき、日数を経るほど集まる稚ブリの数は増える傾向にあった。流れ藻は、隠れ家の役割を持つ分かりやすい集合場所として機能している。だから、かりに流れ藻でなくても、隠れ家になるものを流しておけば、そこに稚ブリがだんだん集まってくる可能性がある。養殖のための稚ブリを集める際にも、この方法は役立ちそうだという。

写真1 河端さんらが組み立てた観測用いかだ。動画・静止画用カメラ(a)、電波発信機(b)、GPSブイ(c)、明るさの記録装置(d)、水温の記録装置(e)、海藻のアカモク(f)。(写真はいずれも河端さんら研究グループ提供)
写真1 河端さんらが組み立てた観測用いかだ。動画・静止画用カメラ(a)、電波発信機(b)、GPSブイ(c)、明るさの記録装置(d)、水温の記録装置(e)、海藻のアカモク(f)。(写真はいずれも河端さんら研究グループ提供)
写真2 昼間に藻の周りを泳ぐ稚ブリ。
写真2 昼間に藻の周りを泳ぐ稚ブリ。
写真3 夜間の稚ブリ。藻の真下で身を寄せ合っている。
写真3 夜間の稚ブリ。藻の真下で身を寄せ合っている。
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