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大気汚染物質がアトピー性皮膚炎を誘発 東北大が仕組み解明

2016.11.16

 大気汚染物質がアトピー性皮膚炎を誘発する仕組みの一端を解明した、と東北大学の研究グループが15日発表した。世界的に患者が増加しているアトピー性皮膚炎は大気汚染と関係があるとされながら詳しい発症メカニズムは分からなかった。新しい薬剤開発につながる可能性があるという。研究成果は近く英科学誌電子版に掲載される。

 アトピー性皮膚炎には遺伝的要因のほか環境要因の両方が関与すると考えられている。東北大学大学院医学系研究科医科学分野・東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之(やまもと まさゆき)機構長・教授らの研究グループは、大気汚染物質と結合すると活性化すると分かっていた「AhR」というタンパク質に着目。AhRが活性化するように遺伝子操作したマウスをつくって観察した。

 その結果、AhR活性化マウスは、かゆみの感覚神経を伸ばす働きのあるタンパク質「アルテミン」が増加。感覚神経が皮膚表面(表皮)近くまで伸びてヒトのアトピー性皮膚炎と似た症状を起こすことが分かった。

 研究グループは、ヒトでも遺伝的要因などを持っている場合、大気汚染物質が表皮につくとAhRが活性化してアルテミンが増え、かゆみの感覚神経が伸長してかゆみ過敏性を引き起こすとみている。かゆみを感じて表皮をかくと傷がつき、そこから異物が侵入して、アトピー性皮膚炎が悪化したりぜんそくを起こしたりするという。

 アトピー性皮膚炎に対する現在の治療法は、ステロイド剤を塗る対処療法が主で根治療法はない。研究グループは、今回の成果を生かした新しい薬剤開発の可能性がある、としている。

図 AhR活性化によるアレルギー皮膚炎発症、悪化の仕組み(東北大学研究グループ作成、東北大学提供)
図 AhR活性化によるアレルギー皮膚炎発症、悪化の仕組み(東北大学研究グループ作成、東北大学提供)

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