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強誘電体薄膜を作製 超高密度メモリーなど応用期待

2015.07.28

 15ナノメートル(100万分の15ミリ)という薄さの強誘電体を作ることに、東京工業大学と東北大学の研究グループが成功した。非常に薄い単結晶膜を作製できたことで、超高密度メモリーや、電池の寿命が飛躍的に延びた高性能のスマートフォンやノートパソコンが実現できる、と研究者たちは言っている。

 強誘電体は、電圧の向きを変えると電極のプラス、マイナスが反転し、かつ電圧をゼロにしても分極が保たれる特性を持つ。すでにICカードなどに利用されている。しかし、薄くすると特性が落ちてしまうことが、応用範囲を広げる障害になっている。

 東京工業大学元素戦略研究センターの清水荘雄(しみず たかお)特任助教と舟窪浩(ふなくぼ ひろし)教授、東北大学金属材料研究所の今野豊彦(こんの とよひこ)教授と木口賢紀(きぐち たかのり)准教授らの研究グループは、トランジスタの絶縁体として広く使われている酸化ハフニウムに着目した。それまで不可能と考えられていた薄さで強誘電性を持つという研究報告が4年前に出たためだ。

 研究グループは、薄膜を成長させる基材の結晶構造とその格子の長さを工夫することで、15ナノメートルという薄さでも特性が劣化しない酸化ハフニウム・酸化イットリウムの強誘電体単結晶膜作製に成功した。酸化ハフニウムと酸化イットリウムの粉末を混ぜ合わせ、ガス化した上で別の基板に吹き付けるという方法をとった。できた結晶膜は酸化ハフニウムの7%が酸化イットリウムで置き換えられた構造となっている。セ氏400度までの高温でも安定した強誘電性を保つことも確認した。

 JR東日本の「Suica」など現在、広く使われているICカードにも、強誘電体は使われている。「これに強誘電体単結晶膜を利用すれば、もっと多くの機能の付加、例えばSuicaに利用者本人のカルテなどの情報を入れる、といったことも可能だ」と、舟窪浩教授は言っている。

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