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単分子素子実現に向け期待の成果

2015.07.02

 分子一つで書き換えが可能な電子素子の開発に成功した、と東京工業大学などの研究グループが1日発表した。

 分子一つ一つにトランジスタなど電子素子の役割を持たせようとする「単分子素子」は、内外の大学や企業が関心を持つ研究開発分野となっている。東京工業大学の藤井慎太郎(ふじい しんたろう)大学院理工学研究科特任准教授、木口学(きぐち まなぶ)教授、多田朋史(ただ ともふみ)元素戦略研究センター准教授と東京大学の藤田誠(ふじた まこと)工学系研究科教授らのグループは、かご状分子の中に同種の分子を積層させると導電性が得られ、異種の分子を積層させると整流性が発現することを、単分子計測を用いて明らかにした。

 研究には、かご状の分子としてトリフェニレン、異種の分子としてナフタレンジイミドといういずれもベンゼン環を持つ分子が使われた。積層させた分子は、化学処理によってかごの中から出し入れが可能。これは一分子を用いて電子素子の機能を自由に変えることができることを意味する。実際に研究グループは、同種の分子を積層することで導電性単分子ワイヤ(配線)、異なった分子を積層させることで単分子ダイオードをそれぞれ作った。

 「分子でコンピューターを作るには、配線、ダイオード、トランジスタ、メモリーが必要な要素となる。構造や酸化状態の変わる分子を積層することによって、トランジスタやメモリー機能を有する単分子素子を開発し、究極の微細化と低消費電力の電子回路実現を目指す」と、研究グループは言っている。

 現在の半導体集積回路は、微細加工技術の限界に近づいているといわれている。あるところまで微細化が進むと電子回路がうまく機能せず、場合によってはショートしてしまうとも考えられるからだ。単分子素子は、こうした微細加工技術の持つ限界を突破し、トランジスタであれば現在より数十倍から数百倍の微小化が可能とも言われている。

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