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細胞分裂を統御する酵素の標的に新配列

掲載日:2015年1月26日

細胞は通常、分裂を繰り返して増えていく。その細胞周期の研究で新しい成果が生まれた。細胞分裂を統御するリン酸化酵素のCdk1の重要な標的タンパク質群を、九州大学大学院理学研究院の佐方功幸(さがた のりゆき)教授と大学院生の鈴木和広(すずき かずひろ)さんらが発見した。細胞の基本である分裂やがんの研究の新しい突破口になるような成果といえる。1月21日付の英オンライン科学誌サイエンティフィックリポ-ツに発表した。

Cdk1は共通のアミノ配列を持つタンパク質(基質)群をリン酸化し、染色体の凝縮や核膜の崩壊などの分裂期の諸現象を引き起こす。細胞分裂の司令塔のような酵素で、約30年前に発見され、発見者らが2001年のノ-ベル生理学・医学賞を受賞した。Cdk1が標的とする共通アミノ酸配列は、セリン(S)かスレオニン(T)にプロリン(P)が隣接した「S/T-P」という配列で、その配列でセリン(S)かスレオニン(T)をリン酸化するとされてきた。

しかし、研究グル-プはこの定説とは異なり、Pの隣接していない配列で、SかTをCdk1がリン酸化することを突き止めた。新たな共通アミノ酸配列(「非S/T-P」配列と命名)を形成しており、それらのCdk1によるリン酸化が細胞の分裂開始やがん化に関与する可能性をカエル卵の実験で初めて示した。

この標的となる新しいアミノ酸配列は最小のものでは「S/T-X-X-R/K」(Xは任意のアミノ酸、R/Kはアルギニン(R)かリジン(K)を示す)を持つこと、より適切な共通配列として「P-X-S/T-X-[R/K]2-5 」([R/K]2-5は2~5個の連続したRかK)を持つことがわかった。これらは従来、Cdk1の標的配列とは見なされていなかった。

新しい共通配列を持つタンパク質には、遺伝子発現を調節する転写因子や細胞分裂に密接に関わるがん化因子もあった。新しい共通配列を持つタンパク質は数千種類にも上る。佐方功幸教授は「この発見が端緒になって、Cdk1が標的とするタンパク質が次々と見つかる可能性がある。それらの多くがリン酸化されて分裂やがんに関わっているのではないか。細胞分裂研究の新しい突破口になるだろう」と話している。

Cdk1による「非S/T-P配列」のリン酸化。Cdk1は通常、ATPをADPに変換させ、その時に遊離するリン酸基(黄丸のP)を基質タンパク質の「S/T-P」配列に転移してリン酸化するが、今回、「非S/T-P」配列もリン酸化することを発見した。
図1. Cdk1による「非S/T-P配列」のリン酸化。Cdk1は通常、ATPをADPに変換させ、その時に遊離するリン酸基(黄丸のP)を基質タンパク質の「S/T-P」配列に転移してリン酸化するが、今回、「非S/T-P」配列もリン酸化することを発見した。

Cdk1による「非S/T-P配列」のリン酸化の細胞分裂やがん化への関与。Cdk1が細胞の分裂開始時に転写因子のC2H2タンパク質の「非S/T-P」配列(S/T-X-X-R/K)をリン酸化し、それによる遺伝子発現を抑制する。また、Cdk1がタンパク質のEct2の「非S/T-P」配列(P-X-S/T-X-[R/K]5)をリン酸化し、細胞の分裂に先立つ球状化を誘起して、がん化に関わる可能性も示した。Cdk1はさらに「非S/T-P」配列の多くのタンパク質をリン酸化し、細胞分裂の諸現象やがん化に関わると予想される。
図2. Cdk1による「非S/T-P配列」のリン酸化の細胞分裂やがん化への関与。Cdk1が細胞の分裂開始時に転写因子のC2H2タンパク質の「非S/T-P」配列(S/T-X-X-R/K)をリン酸化し、それによる遺伝子発現を抑制する。また、Cdk1がタンパク質のEct2の「非S/T-P」配列(P-X-S/T-X-[R/K]5)をリン酸化し、細胞の分裂に先立つ球状化を誘起して、がん化に関わる可能性も示した。Cdk1はさらに「非S/T-P」配列の多くのタンパク質をリン酸化し、細胞分裂の諸現象やがん化に関わると予想される。
(いずれも提供:九州大学)
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