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海洋プレート直下に潜むマグマの証拠

掲載日:2014年10月29日

論争のあった海洋プレート直下に潜むマグマが実在する証拠を、北海道大学総合博物館の山本順司(やまもと じゅんじ)准教授らが発見した。マグマの噴出期間が数百万年にも及ぶことも確かめた。海洋プレートが円滑に動くには海洋プレートの下にマグマがあるためとする説がある。今回の発見はこの説を証明した。成果は、是永淳(これなが じゅん)米エール大学教授、平野直人(ひらの なおと)東北大学准教授、鍵裕之(かぎ ひろゆき)東京大学教授との共同研究で、米地質学会誌Geology11月号に発表した。

地球の表層はプレートと呼ばれる岩板で覆われており、それらがゆっくり移動して、地震を起こしたり、地形を発達させたりしてきた。プレートとその下にあるマントルは岩石でできており、プレートが移動する際、岩石層同士が激しく摩擦を起こす。それらの間にマグマが存在していれば、潤滑剤の役割を果たし、プレートの移動を説明しやすくなるため、厚さ約80kmの海洋プレート直下にはマグマが存在するという説が唱えられてきた。しかし、地球深部を再現する高温高圧実験などで懐疑的な見方も示され、論争が続いていた。

研究グループは2006年、日本列島に太平洋プレートが沈み込む直前の東北地方沖に、標高数十メートルの小さな海底火山が群れをなして多数存在することを報告している。一般的な火山と比べて山体が小さいため、「プチスポット」と名づけ、海洋プレート直下のマグマが染み出した場所であると捉えた。今回、有人潜水調査船「しんかい6500」などでこのプチスポットで採取していた溶岩に含まれる鉱物の化学組成を精密に調べた。

プチスポットから採取した溶岩には、海洋プレートのかけらが多数含まれている。それらは地下深部から上昇してくるマグマが、通り道の壁に存在していた岩石を捕獲し、海底まで運び上げたもので、捕獲岩と呼ばれる。地温の上昇は岩石を構成する鉱物の化学組成に変化をもたらすため、捕獲岩の鉱物の化学組成を手がかりに、形成された深さと温度を探ることができる。

海洋プレートは大洋の中央海嶺で生まれ、その後どんどん冷えていく。日本に沈み込む直前の太平洋プレートは誕生後1億4000万年も経過しているため、冷たい温度構造(深さと温度の関係)を持つと予想される。しかし、今回得た温度と地下の深さの情報をグラフで示すと、プチスポット火山直下の海洋プレートは予想より500℃程度も高い温度構造を持つことを突き止めた。

鉱物に記録されている温度情報を書き換えるには数百万年もの時間を要するため、今回明らかになった高い温度構造は、プチスポット火山群が数百万年以上にわたる火成活動によって形成されたことを意味する。このような長期間にわたるマグマの供給には安定したマグマ供給源と供給の仕組みが必要となる。コンピューターで計算したところ、直下から上昇するマグマによって、海洋プレートが予想より約500℃高い温度で、数百万年間加熱し続けられることを示せた。これらの結果から、「東北地方沖の太平洋で発見したプチスポット火山群は海洋プレート直下のマグマに由来する」と結論づけた。

山本順司准教授は「海洋プレート直下のマグマの存在は、これまで地震波観測などによる間接的な方法で、その存在が議論されていたが、今回の研究で『幻の存在』だったマグマの実在を確認できた。これで長年の論争に終止符を打てるだろう。このマグマは海洋プレートを動きやすくする潤滑剤と考えられる。地球科学の基本であるプレート運動の研究に影響を与える重要な証拠になる」と話している。

溶岩を採取した場所(東北地方の沖)
図1. 溶岩を採取した場所(東北地方の沖)

マグマによって海底に運び上げられた海洋プレートのかけら(捕獲岩)が記録していた温度と深さの情報(白い丸印)。日本に沈み込む太平洋プレートは非常に古いため、冷たい温度構造を持つと考えられていた(青線)。ところが、プチスポット火山の直下の海洋プレートは、まるで生まれたてのような熱い温度構造(赤線)を持つことがわかった。
図2. マグマによって海底に運び上げられた海洋プレートのかけら(捕獲岩)が記録していた温度と深さの情報(白い丸印)。日本に沈み込む太平洋プレートは非常に古いため、冷たい温度構造を持つと考えられていた(青線)。ところが、プチスポット火山の直下の海洋プレートは、まるで生まれたてのような熱い温度構造(赤線)を持つことがわかった。
(いずれも提供:北海道大学)
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