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養分不足なら他の根で吸収する仕組み発見

掲載日:2014年10月17日

植物は意外な能力を秘めている。植物が根で土から窒素栄養分を効率よく取り込む仕組みを、名古屋大学大学院理学研究科の松林嘉克(まつばやし よしかつ)教授と田畑亮(たばた りょう)研究員、住田久美子(すみだ くみこ)研究員、篠原秀文(しのはら ひでふみ)助教らが見つけた。周りの土に窒素分が不足すれば、根はそのシグナルを新しいホルモンのCEPで葉に伝え、他の根に吸収を促す巧妙な制御の仕組みがあった。窒素飢餓に強い作物づくりなどにつながる発見といえる。10月17日の米科学誌サイエンスに発表した。

植物は窒素分を根から、主に硝酸イオンとして吸収し、タンパク質を作りだして育つ。しかし、自然界の土壌中の硝酸イオンの分布は極めて不均一で、植物は個々の根の環境に応じて、窒素分の取り込みを制御する必要がある。研究グループはシロイヌナズナの遺伝子情報を基に、根の周りの窒素分不足を関知するペプチドホルモンのCEPを突き止めた。

根が窒素分不足に気づくと、アミノ酸が15個並んだCEPを生産し、それが道管を通って地上部の葉に移動して、2種類の受容体を介して窒素飢餓を知らせていることを確かめた。根からこのホルモンを受け取った葉は、他の根に別の信号を送り、硝酸イオン取り込み量を増大させて、局所的な窒素分の不足を補?(ほてん)していた。

窒素が欠乏した環境に一部の根を入れて育てると、正常なシロイヌナズナは他の根が窒素分吸収を増やす様子がみられた。2種類のCEP受容体の遺伝子を欠損させて、このシステムを阻害すると、シロイヌナズナは根から窒素分を吸収できずに、葉が黄色くなって、草丈も小さくなることを実証した。

松林嘉克教授は「動き回らず、一見静かに見える植物も、ダイナミックな情報経路を体内に持ち、変動する土壌の窒素環境に対して、驚くほど巧みな環境適応能力がある。その植物の賢さの一端がわかった。このペプチドホルモンCEPの遺伝子はすべての種子植物にあるので、植物に普遍的な仕組みだろう。葉にかけるだけで、根での硝酸イオン取り込みを促すような薬剤の開発も原理的には可能だ」と話している。

ペプチドホルモンCEPを介した全身的な窒素分取り込み要求の信号伝達の仕組み
図1. ペプチドホルモンCEPを介した全身的な窒素分取り込み要求の信号伝達の仕組み

2種類のCEP受容体遺伝子欠損のシロイヌナズナの表現型
図2. 2種類のCEP受容体遺伝子欠損のシロイヌナズナの表現型
(いずれも提供:松林嘉克・名古屋大学教授)
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